中国の不動産、デフォルト発生が記録的規模…企業全体のドル資金調達が困難の懸念

 労働市場における深刻なミスマッチも頭が痛い。熟練労働者が極端に不足しており、その規模は約2000万人に達している。影響は沿岸部を中心に顕著となっているが、政府が職業訓練教育の充実に努めてこなかったことから、教師の質が低下し、良い人材が育たないという事態になっている。

 その一方で大学卒業生は増加するばかりだ。2022年の新卒者数は前年比167万人増の1076万人となり、史上初めて1000万人を超える見通しだ。だが新型コロナの感染拡大でここ数年続いている就職難がさらに悪化している。

中国史上かつてないほどの苦境

 中国政府首脳が集まって経済政策の方針を策定する中央経済工作会議は、12月10日に発表した声明の中で「中国の経済発展は、需要縮小、供給リスク、市場の期待の低下という3つの圧力に直面している」ことを認めた。

 中国最高指導部はこれに先立ち、12月6日に来年の経済政策に関する共産党中央政治局主催の重要会議を開き、「金融の安定をはじめとする『6つの安定』と国民雇用の保障をはじめとする『6つの保障』をしっかりと行う」という異例の申し合わせを行った。

「政治・経済・貿易・金融・エネルギーなどすべての分野で基本的な運営が不安定になっている」とする最高指導部の認識に「中国がかつてないほど苦境に陥っているのではないか」との憶測が生じている。政府中枢に近い清華大学の李稲葵教授(専門は経済学)も「今後5年間、改革開放が始まってからの40年来で最も困難な時期になる可能性がある」と危機感をあらわにしている。

 人民日報は12月に入り、改革開放に関する評論記事を掲載したが、鄧小平氏ら元指導者の功績を讃えたものの、習近平国家主席についての言及はなかった。「経済の失速が原因で共産党内部の権力闘争が激化している」との観測が出ている。中国経済はついにハードランディングしてしまうのだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職