村田製作所には海外売上高比率が91.6%(21年3月期)というグローバル企業としての誇りがある。そこで、22年3月期中に全固体電池の量産に乗り出す。野洲事業所(滋賀県野洲市)に量産ラインを設置し、イヤホンなどのウエアラブル端末向けに供給する。月産10万個の生産を最終的に予定している。
電池事業は17年、ソニーから買収したことで本格的にスタートを切った。ソニーが1991年、世界で初めてリチウムイオン電池を量産した福島県郡山市の工場は現在、生産子会社・東北村田製作所となっている。リチウムイオン電池技術に主力のMLCCで培った積層技術を加味して大容量化を実現。発火しにくい高性能電池の「フォルテリオン」を生産している。
全固体電池などの新製品の立ち上げは負担になっており、22年3月期に達成する予定だった電池事業の黒字化は先送りする。電子部品の需要は長期的には5Gや電装化が進む自動車用向けを中心に拡大するとみている。次なる成長の柱として、早急に全固体電池を軌道に乗せることが課題である。全固体電池は何といっても脱炭素の切り札となる可能性があるからだ。
(文=編集部)