「同業者の廃業については、群馬みたいな地方ほど増えてるんじゃないか。私の近所でもここ2年で3件倒産した。数十年もやってきた社員数十人の会社もあった。特徴的なのは、普通、倒産だと支払いが遅れているなどの噂が立つものだが、それがないこと。つまり、業績が悪くもないのに、先行きを悲観して会社を畳むケースが増えている。後継者がいなかったことも大きいと思う。コロナ禍から立ち直ってもEV化で先行きが暗く、昨今の車離れもある。子供に継げとは強くは言えない気持ちは痛いほどわかる」
トヨタだけでなく、日本国内でのEVのパイオニアである日産自動車の部品メーカーも対応を迫られている。日産の取引先企業で構成される「日翔会」の加盟メーカーはこう話す。
「EV化で部品点数が減るのは仕方ないが、階層が下になればなるほど悲惨だ。新事業に踏み出す体力がないし、系列ごとに部品も違うから特定の完成車メーカーへの依存度も高い。
日産は現在の内田誠社長になってから部品メーカーの意見を取り入れる姿勢を見せてはいるが、十分とはいえない。昨年の日翔会の会合では『計画と実際の生産量の乖離が激しい』『値下げ要請がきつすぎる』などの不満が出ていた。世界中がEV競争の波にのまれるなかでは、部品メーカーはより条件のいい取引先を探すしかない。EVでは自動車メーカー以外の企業も参入してきているから、うまく食い込めば商機があるかもしれない。日本の自動車メーカーは良い部品メーカーをしっかり囲い込んでおかないと取り返しがつかないことになるだろうね」
21年の自動車業界は、コロナ禍に加え、世界的な半導体不足という二重苦に見舞われた。足元では半導体は生産回復の兆しは見え始めたものの、部品調達網の本格回復にはまだ時間がかかる見通しだ。22年は自動車部品メーカーにとって、依然として厳しい環境が続きそうだ。
(文=編集部)