「4680」の開発はテスラのサプライヤーである韓国LGなども進めているとみられ、予断を許さない。パナソニックは21年3月までに、保有していたテスラ株をすべて売却した。売却額は約4000億円。取得額(約24億円)の実に150倍を超えた。
パナソニックは2010年にテスラ株140万株を購入した。09年に初めてEV用電池の供給契約を結び、出資することでテスラとの関係強化を狙った。当時は、テスラを資金的に支援する意味合いもあったが、いまやテスラは世界でトップ10に入る時価総額を誇るキャッシュ・リッチ企業に変貌した。パナソニックがテスラの経営を支えているわけではない。
株式を売却した後もテスラへのEV用電池の供給を続けており、EVメーカーと一サプライヤーの関係となる。複数の自動車メーカーに電池を供給する中国のCATLや韓国のLGなど、他の大手電池メーカーとは異なり、パナソニックの供給先はテスラが中心だ。パナソニックはテスラ以外に、有力な供給先を得ることが喫緊の経営課題となっている。
パナソニックのEV電池の現状は以下の通りである。EVの米新興メーカー、カヌーに22年から車載電池を供給する契約を結んだ。テスラが採用している電池と同じものを数年間納品すると、カヌーが10月25日に発表した。カヌーが22年に欧米で売り出す電動バン向けに、パナソニックは電池を日本国内で生産して輸出する。
かつて、パナソニックは車載電池の世界シェアで首位だったが、現在は中国のCATLがその座を占め、韓国勢も着実にシェアを高めている。韓国の調査会社のSNEリサーチによると、20年の車載電池の生産量の世界シェアは中国のCATLが24%で首位、韓国のLG(23.5%)と続く。3位のパナソニックは18.5%。パナソニックは19年に比べて5.9ポイントシェアを落とした。
日本政府は車載用を中心とする先端電池工場の建設を支援する目的で新たな補助金を設け、21年度補正予算に1000億円程度を計上する。現在は中国勢と韓国勢がEV向け電池市場の8割を占める。パナソニックはアップル・カーに電池を供給できるのか。契約できれば浮上への転換点となる。
(文=編集部)