最初はFacebookの友だち同士の話題であっても、ひょんなことから外に出てしまうこともあり得る。このように、ちょっとした不用意な投稿が自分の将来に響く可能性があるのだ。
「匿名の気安さから軽い気持ちで投稿をしても、徐々に自分の正体がバレることがあります。たとえば、『学校の創立記念日にディズニーランドに行った』という投稿をすれば、過去の投稿とすり合わせることによって、どこの学校に通っている何年生のだれか、ということまでわかってしまうこともあるのです」と、河瀬弁護士は語る。
それでは、削除することはできないのだろうか。各サイトの削除申請フォームや、サイトの運営者、サーバーを管理している会社に対して、削除請求を行うことはできる。しかし、個人で削除を請求するのは簡単なことではない。インターネットの仕組みは複雑で、だれに削除を求めればいいのか簡単にはわからず、わかっても簡単には応じてもらえないからだ。
自分自身を守るためには、多少お金がかかっても弁護士に任せたほうが賢明だといえるだろう。
「『どこのサイトならどうやって消せるのか』というノウハウや、『このような理由で消されるべきだ』と説得する交渉方法は専門的知識と経験の蓄積がなければ得ることはできないからです」と、河瀬弁護士は語る。
デジタルタトゥーを防ぐためには、どんなことに気をつければいいのだろうか。
まずは、書き込む前に一度、冷静になることだ。2つ目は、炎上しても、スルーすることが基本だ。自分に対する批判の声を聞くと、往々にして反論、弁明したくなってしまう。しかし、好き勝手なことを言ってくる人を説得しても何も得ることはない。どうしても反論したい場合にはワンクッションを置いて、第三者に意見を仰いでみることだ。
3つ目は、個人情報につながることは載せない。匿名でも現実世界につながるリスクがあるからだ。
「それには、何をネットに載せるかを吟味することです」と河瀬弁護士は語る。たとえば、「銀座にショッピングに行った」とか「六本木のレストランに行った」などは載せてもいいが、「大塚のカラオケに行った」とか「荻窪の和食屋に行った」とは載せない。大塚や荻窪の店に行くのは大概、その辺に住んでいる人に限られるからだ。
不用意な投稿をして後悔しないように、落とし穴があることを肝に銘じて気をつけたいものだ。
(文=林美保子/フリーライター)
●林美保子/フリーライター
1955年北海道出身、青山学院大学法学部卒。会社員、編集プロダクション勤務等を経て、フリーライターに。主に高齢者・貧困・DVなど社会問題をテーマに取り組む。著書に『ルポ 難民化する老人たち』(イースト・プレス)、『ルポ 不機嫌な老人たち』(同)。