サッカー日本代表の人気低下が著しい。本来であれば“ドル箱”だったワールドカップ(W杯)予選も盛り上がりに欠け、一層その気配が加速している。
決定的だったのが、膨大に膨れ上がった放映権料の兼ね合いで民放各局がアウェー戦の放映を取りやめたことだ。テレビ朝日の関係者が語る。
「日本代表関連は、一昔前までは人気コンテンツでしたが、今は費用対効果で考えると、あまりおいしいとはいえなくなりました。長年続いたサッカー番組『やべっちF.C. ~日本サッカー応援宣言~』の終了も含めて、上層部はサッカーに対してうまみを感じていません。一部では完全撤退の意見も出ているほどです。かかる費用に対してペイが難しいというのが、現在のサッカー日本代表のポテンシャルでしょう。特に民放での放映が限定されたことでコアファン以外の市場が減り、その影響も大きいです。森保一監督になってからは試合内容も退屈で、今後はより代表離れが進んでいくとみています」
W杯予選ではホームのオマーン戦で敗れるなど出だしから躓き、試合内容も単調なものが多い。代表の力が落ちていることはビジネス的にも影響が大きい、と指摘するのは、大手広告代理店のスポーツ担当者だ。
「DAZNなどのサブスク配信が浸透し、誰でも気軽に欧州のトップレベルの試合を観る環境が整う時代になりました。そんななかで日本代表がW杯で勝ち進み上位に行く、というイメージを持っているファンは減っています。つまり、日本人の目も肥えてきたわけです。本田圭佑や香川真司がいる時代は『W杯で優勝する』といった、わかりやすい発言もあり、マスコミもそれを取り上げてきました。ただ、今はそういったマスコミ受けする発言をする選手もいません。それでも注目度が高いのが代表戦のブランド力でしたが、今の率直な価値は、ここ20年で一番低いくらいの水準まで落ちています」
さらに、ほかのスポーツのように世界的に名の知れたアスリートがいないことも、この傾向に拍車をかけているという。
「たとえば、野球であれば大谷翔平、テニスなら大坂なおみや錦織圭、フィギュアスケートの羽生結弦、バスケットの八村塁、ボクシングの井上尚弥といった面々のように本当の意味で世界基準といったスター選手が、サッカーでは誰もいません。これは広告価値的にも無視できないポイントです。
サッカーの場合は、サッカー協会やメディアによって人気を“つくられた”選手で、本物と呼べる選手が今は見当たりません。一人のスーパースターの存在が認知度を高めるのがスポーツ界ではありますが、そういった劇薬もないのが現状です。久保建英にしても、協会からゴリ押しされ、ひとえにその重圧を背負っていて、見ていて気の毒な部分もあります。加えてサッカーはもともと人気スポーツだったこともあり、殿様商売で危機感も薄いという協会の体質も大きな問題でしょう」(同)
スポーツビジネスの場に立つ人間たちにとっても、代表人気の低迷は深刻なようだ。では、どうすれば人気の回復につながるのか。現在の田嶋幸三会長、森保監督体制の刷新もひとつの手だと提言するのは、ベテランのサッカーライターだ。
「今の協会や代表チームを一言で表すなら“無策”です。一貫性が見えない育成や強化方針、代わり映えしない選手選考。協会内も田嶋会長の独裁状態でイエスマンばかりです。さらに会長の2年間の続投が決まったことで、しばらく冬の時代が続く可能性が高いです。そんな状況に危機感を持つメディアもありますが、代表に限らずJリーグでも批判的なことを書けば“出禁”をチラつかせ、情報を制限されるのが実情です。
ただ、一般紙を除いたサッカーメディア全般のレベルが低く、それでも厳しいこと書いてやろうという人間はほとんどいません。正直、今の体制を変えないと、状況は一層悪化するでしょう。日本サッカー界の未来を考えるなら、W出場権を逃し、会長の更迭といった荒療治が一番必要な気もしますね」
ピッチ外でも苦難が続くサッカー日本代表のファン離れは、今後も進んでいくのかもしれない。仮にW杯出場を決めたところで、状況が好転することは、しばらくないのだろうか。
(文=編集部)