米国、原油備蓄を放出、高騰に世界で警戒…シェールバブル終焉、原油高の時代へ

 OPECプラスが増産幅の上積みに慎重であることなどから「原油価格は年末までに1バレル=100ドルを超える」との声が高まっていたが、11月に入ると原油価格は軟調気味となっている。市場の関心も「供給不足」から「供給過剰」にシフトしつつある。

持続可能かつ抜本的な政策が不可欠

 バルキンドOPEC事務局長は16日、「早ければ12月にも供給過剰が始まり、来年もその状態が続くだろう。注意しなければならないシグナルが出ている」と発言した。国際エネルギー機関(IEA)も16日、「米国などの増産により、世界の原油価格の上昇に一服の兆しが出てきた」との見解を示したが、楽観できる状況にはない。

 確かに米国のシェールオイルの主要地域であるパーミアンの生産量は過去最高を超える勢いだが、他の生産地の増産のペースは芳しくない。米国の原油生産量は日量1140万バレルとコロナ禍前よりも100万バレル以上少ない状態が続いている。米国の原油増産の障害になっているのは投資家の心変わりだ。シェールオイルに過去10年間で約2000億ドルの資金が投じられたが、それに見合うリターンをもたらさなかったとの不満がある。加えて「脱炭素」の風潮も強まっており、「投資家はもはやシェールオイルに期待していない」との声が伝わってくる。

 世界の上流分野でも過小投資が問題となっている。2014年に約8000億ドルだった投資規模は昨年は約3000億ドルにまで縮小しており、今後も低水準で推移する可能性が高い。サウジアラムコCEOが「現在の余剰生産能力(日量300~400万バレル)が来年減少する」との認識を示したとおり、投資不足が早晩、供給不足を招くのは必至だ。

 来たるべき原油高時代に備えて、日本をはじめ国際社会は、小手先ではない、持続可能な抜本的な政策を構築することが不可欠だ。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職