日本人、先進国の中で最も他人を信頼していないとの調査結果…経済停滞の要因

 昨年12月、超党派の議員が提出した「労働者協同組合法」が成立し、日本でも来年10月から労働者協同組合を設立できるようになっている。先の衆議院選挙では各党がこぞって政策綱領に「協同労働の推進」を謳っていたが、残念ながら「分配」政策ばかりが終始クローズアップされていた。

 コロナ禍後の新たな商機を捉えようと地域で起業熱が高まっている。今年4~9月の新設法人数は前年比35%増の9万6530社となった。自治体の起業支援の充実が追い風となって、法人数、増加率ともに半期ベースで過去最多となった。

 現在、協同労働はシルバー世代の働き場の創出として活用されることが多いが、現役世代も注目する価値があると思う。いわゆる「ブラック企業」問題から逃れるための方策として労働者協同組合は、気心の知れた仲間などと共に「身の丈にあった」起業を行う際の有効な選択肢となると考えられるからだ。

 岸田総理のお膝元である広島県広島市は、2014年から「協同労働プラットフォーム」モデル事業を開始している。100万円を上限に立ち上げ費用の半額を補助しており、今年3月末時点で25団体が活躍している。東京都特別区でも同様の動きが出ている。

 日本のソーシャル・キャピタルの水準が上がれば、資本主義のパフォーマンスは自ずと向上する。ソーシャル・キャピタルの充実に注力することが、機能不全に陥った日本の資本主義を再起動させるための最も重要な一歩なのだ。

 1年後の法施行に向け、各地で労働者協同組合の設立準備が進んでいる。政府は幅広い世代で協同労働の輪が広がるよう、必要な予算措置を講ずるべきではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省

1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)

1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)

1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)

2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)

2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)

2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職