罰金なき入国規制緩和、感染が再拡大すれば甚大な損失を被るのは国民や飲食店だ

とのことだった。だが、これでは変異株等の入国を一度は許してしまうことになりかねない。せっかく新型コロナウイルス感染による死者数をゼロにするほど感染拡大を抑え込むことができたのに、冬に向かって再び感染拡大を許してしまうのか。そして、ロックダウン(都市封鎖)を可能にするための法改正が再び声高に論じられたりするのか。

 間違いなく言えるのは、ロックダウンによって国民や飲食店等が被る手間や損失より、入国規制によって生じる手間や損失のほうが、はるかに少なくて済むということだ。それをわかった上で入国規制緩和をするのだから、緩和を国に働きかけた者や、緩和を許した者たちの責任は重大である。

 問題は、このたびの入国規制緩和が再び我が国に感染拡大を招いた場合、実際の責任を取るのは受け入れ先の企業や大学等ではなく、感染して重症化したり、さらなる税金の出費を迫られたりする形で責任を取らされる、私たち下々の一般国民である――ということだ。

 一部の限られた人々の利益のために、国民全体が損を強いられ、痛い目に遭うようなことだけは、是が非でも避けなければならない。いっそのこと、条件違反をした企業や大学等には「罰金」という罰則を科すのがちょうどいいのかもしれない。

(文=明石昇二郎/ルポライター)

●明石昇二郎/ルポライター、ルポルタージュ研究所代表

1985年東洋大学社会学部応用社会学科マスコミ学専攻卒業。

1987年『朝日ジャーナル』に青森県六ヶ所村の「核燃料サイクル基地」計画を巡るルポを発表し、ルポライターとしてデビュー。その後、『技術と人間』『フライデー』『週刊プレイボーイ』『週刊現代』『サンデー毎日』『週刊金曜日』『週刊朝日』『世界』などで執筆活動。

ルポの対象とするテーマは、原子力発電、食品公害、著作権など多岐にわたる。築地市場や津軽海峡のマグロにも詳しい。

フリーのテレビディレクターとしても活動し、1994年日本テレビ・ニュースプラス1特集「ニッポン紛争地図」で民放連盟賞受賞。