数ある新聞社のなかでも読売新聞の記者メモは入手しにくいことで有名だ。読売新聞の社の方針として、自社記者と週刊誌記者が付き合うことに非常に強い警戒心を持っている。私も親しい読売記者に「私が週刊誌記者と会っていることは絶対に口外しないでください」と釘を刺されたことがあるほどだ。
今回の問題については昨年、読売内では社内調査が行われており、問題の一部が明らかになっていた。情報漏洩先に週刊誌が存在したことは読売的にはあってはならないことだったはずだ。その後、A記者は検察担当から外されて「読売中高生新聞」に異動、さらに懲戒解雇になるという厳しい処遇を受けた。必要以上に厳しいと思われる処分になったのも、読売新聞の“週刊誌嫌い”も一因だったと思われる。
公然の秘密だった記者メモ入手問題が明るみに出たことは、週刊誌的にも都合の悪いことだった。実際に「これからやりにくくなる」(現役・週刊誌記者)という声も聞こえてくる。
だが、週刊誌側も自戒しなければならないと筆者は考える。週刊誌の情報取り扱いが、時代を経て徐々にルーズになってきた側面があることは否めないからだ。今回のケースでは読売記者が女性週刊誌記者にセクハラまがいの行為を行っていたという否があると同時に、週刊誌側にも“情報源がバレてしまった”という大きな失点があった。筆者のもとに「情報源を守れなかったことをどう思うか」という問い合わせが多数届いたのも、記者にとっては「情報源の秘匿」は守るべき大きな使命の一つとなっているからである。
読売事件は週刊誌記者にさまざまな教訓を与えた事件であったともいえるだろう。
(文=赤石晋一郎/ジャーナリスト)
●赤石晋一郎/ジャーナリスト
南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。講談社「FRIDAY」、文藝春秋「週刊文春」記者を経て、ジャーナリストとして独立。
日韓関係、人物ルポ、政治・事件など幅広い分野の記事執筆を行う。著書に「韓国人韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち」(小学館新書)、4月9日発売「完落ち 警視庁捜査一課『取調室』秘録」(文藝春秋)など。