球界の盟主・読売ジャイアンツ(巨人)に、明らかな異変が起きている。
東京オリンピック期間の中断を挟み、シーズン再開までは首位争いを繰り広げていたチームが9月に入り急に失速し、直近の東京ヤクルトスワローズ、広島東洋カープとの6連戦では、まさかに6連敗。首位ヤクルトとは10.5ゲーム差の3位に沈んでいる(10日終了時点)。
シーズン前は、その圧倒的な戦力から優勝の最右翼とみられた巨人だが、もはやAクラス死守が現実的な目標になりつつある。試合結果も去ることながら、何より気になるのは、淡白な試合展開と選手たちの覇気の無さだ。
一体、何が巨人をこうも変えたのだろうか。巨人の番記者は、次のように明かす。
「今のチームは、まさに最悪といえる状況です。チーム内では良くも悪くも、原(辰徳)監督の絶対的な影響力があります。首脳陣にとどまらず、親会社や経営陣も原監督に強く言える人は皆無に等しいんです。元木大介・ヘッドコーチや宮本和知・投手チーフコーチらを入閣させ、チームの雰囲気を明るくすることを狙いましたが、負けが込むと脆さを見せています。今季は大型補強がことごとく失敗して、ケガ人の続出や外国人の帰国など不運が重なっています。それにしても、あまりに寂しい結果で、チームの中にも半ば諦めモードのような空気が流れています」
さらに番記者が指摘するのは、ある選手の加入がチームの雰囲気を悪化させたという点だ。
「中田翔の加入以降、チームが変わりました。中田の加入は完全に原監督マターですが、それが悪いほうに出たと思います。長打力がある中田は得点力不足に苦しんだチーム状況に当てはまる補強ですが、あれだけ世間を騒がした選手ですから『禊はどうなっているのか』という雰囲気にもなります。
特に今季はファーストを任されていた中島宏之が勝負強い打撃を見せていただけに、『中島さんでいいのでは』という意見もありました。中田が活躍すれば話は違ったのでしょうが、全てが悪い方向に出てしまいました。若手は結果を残せないとすぐに2軍に落とされますが、中田は合流して即試合に使われていました。チーム内の競争という意味でも、歪が生まれた獲得でした」(同)
今季の低迷の原因は、菅野智之や丸佳浩ら主力の不振が大きく響いたかたちだ。気になるのは、坂本勇人や丸や梶谷隆幸といった来季以降も主力を担うであろう選手たちも、高齢化しつつあるという点だ。
「野手では松原聖弥、投手では戸郷翔征と高橋優貴がひとり立ちしましたが、ほかに核となるような若手が育っていません。特に野手の高齢化は深刻で、補強で補うにしても今シーズンオフは、昨季のようには選手が市場に出ない可能性が高いです。ベテラン勢も年齢的にパフォーマンスを落とす年齢に差し掛かっています。
さらに、今季もっとも首をかしげた采配は、終盤に先発投手を中4日で回すという投手起用です。目先の勝利にこだわるあまり、投手の劣化を早め、壊しかねない手法といえます。この中4日体制は結果も伴わず、このローテーションを採用し始めた時期からチーム成績はさらに下降していきました。来季以降、この歪は必ず出てくると思います」
そんな先行き不安な巨人の指揮官を務める原監督だが、契約は今シーズン終了までだ。一部では原体制の継続が取り沙汰されているが、実際はどうなのか。
「現状だと、ほぼ100%原さんが来季も監督に座るでしょう。ただ、年齢的なことを考えても、さらなる長期政権というのは考えにくいです。高橋由伸前監督は経歴的にも、実績的にも球団は大いに期待を寄せていましたが、その穏やかな性格もありチームをまとめきれませんでした。そこで、次期監督候補の最右翼は阿部慎之助作戦コーチでしょう。
引退時から、“慎之助を未来の指揮官に”という絵は描かれていましたが、下で順調に指導者としてのキャリアを積んできています。彼は精神論的な厳しいことも言いますが、野球への理解も深く、選手からも慕われており、バランス感覚に優れています。特に若手の突き上げが必要な今、首脳陣を含めて若返りが必要なことは明白です。村田修一や杉内俊哉ら、現役時代から勝手知るメンバーを原監督が重用し、次へバトンを渡す準備も同時に進めているのでしょう」(球団関係者)
仮に監督交代となると、その時期はいつになるのか。
「早ければ2023年シーズンということもあるでしょう。ただ、高橋由伸前監督の失敗もあり、親会社も慎重に判断するはずです。仮に慎之助がダメだった場合、目ぼしい候補がほかにいないので。生え抜きのスター選手で、実績と人気を兼ねるとなると、なかなか適任がいません。将来的には坂本もその筆頭でしょうが、彼にはまだまだ現役で頑張ってもらわないといけませんから」(同)
巨人にとっては、来季も厳しいシーズンが待ち受けているのかもしれない。
(文=編集部)