同社がタピオカ事業と共に育てていたものが2つある。一つは「台湾カステラ」を持ち帰り品として拡販すること。もう一つは、同社の関連会社である株式会社ドリンクリンクの事業だ。
前者の台湾カステラとは、日本のカステラと比べるときめが細かく濃密でクリーミーな食味であることが特徴である。カステラをはじめとした和菓子や、ケーキなどの洋菓子とも異なり、スイーツの選択肢を広げる存在である。
Bull Puluの既存店では台湾カステラを焼成する機能を持つところもあるが、この商品の多くは東京・駒込の店舗や埼玉・和光の工場で焼成し、それを冷凍して各店舗に配送している。和光の工場では、この他、餃子の製造を行い、この年末からタピオカも製造してクオリティアップに磨きをかける。
後者の事業とは、ドリンクリンクが輸入しているタピオカ、シロップ、茶葉などの商品をB to Bで飲食業者に提供していること。例えば同社のシロップを仕入れた居酒屋では、それを使用して自社オリジナルのサワーを提供したり、かき氷に使用しているパターンもある。これらの商品は日本のメーカーにはない、本場“台湾”を感じさせ、また使い勝手のよいことが既存のユーザーから喜ばれている。
加藤氏はコロナ禍にあって、「当社はこれからどのように進むべきか」ということを一生懸命考えたという。その結果「直営部門」と「フランチャイジー部門」の両輪で展開していこうと方針が定まってきた。
まず「直営部門」は、これまで同社のタピオカ事業が大きく躍進することになった「台湾食文化」を基軸として推進していく方針だ。そこで、創業の事業であるBull Puluは“台湾ポップカルチャー”をコンセプトとして、現状の商業施設を中心とした立地で展開する。本場イタリアのエスプレッソクオリティを核としたコーヒーショップチェーンの「セガフレード・ザ・ネッティ」と業務提携を行い、ここのメニューを提供していくなど、タピオカに加えて多様なメニュー構成を取る。
次に、「Bull Pulu カフェ」。これは台湾茶のカルチャーをコンセプトとして、駅ビル、百貨店に展開して、台湾茶が楽しめるほか、持ち帰りのスイーツを充実させる。
そして、フード業態の「Bull Pulu Tenshin」「灯」。台湾屋台フードや豆花(トウファ)をはじめとした台湾スイーツを提供する。さらに、「生餃子 小籠包 餃子」。これは、生餃子の他に小籠包、餃子の販売店である。さらにBull PuluやBull Pulu TenshinはFC本部としての事業を推進する。
もう一つの「フランチャイジー部門」は、すでにフランチャイジーとしてさまざまな飲食店を展開していることを基盤として、これらを推進していく構えだ。
まず、加藤氏の父の代に基盤をつくった長崎ちゃんぽん専門店「リンガーハット」が現状2店舗存在する。次に、日常外食にエンターテインメントとこだわりの要素を提案するB級グルメ研究所が本部のナポリタン専門店「パンチョ」が1店舗存在する。さらに、台湾ではスイーツや台湾フードの人気ブランド「騒豆花」(サオトウファ)が1店舗存在する。
そして、これから高級パン「みるく」を展開する。これは足立区北綾瀬の牛乳販売店が開発したブランドで商品にはプリンやソフトクリームもある。これが業態として加わることによって、同社のターゲットがこれまでの若い女性中心といった固定的なファンから老若男女へと大きく広がることが想定される。
コロナ禍以前の同社の年商は27億円であったが、コロナ禍で15億円となった。それを今期19億円に巻き返し、5年後40億円を計画している。同社がこれから成長していく場所として想定している場所の多くは商業施設である。これは加藤氏が過去大手流通・小売業を経験していたノウハウを背景としていて、過去から一貫して得意とする場所での成長を描いている。
同社を成長させてきたタピオカはコロナ禍で揺らいだが、一方で「台湾食文化」を基軸としてきたことを改めて見直して新しいスタートを切っている。
(文=千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト)
●千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト
フードサービス業界の経営専門誌である『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)とライバル誌両方の編集長を歴任。2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく、最新の動向もリポートする。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)。