食料自給率37%の日本、輸入が途絶えた場合の「一日の食事の献立」が衝撃的

食料自給率37%の日本、輸入が途絶えた場合の「一日の食事の献立」が衝撃的の画像1
「Getty Images」より

 政府は2020年の食料自給率(カロリーベース)が過去最低の37%であったと公表した。食料自給率が減少した原因として、政府は「米の需要が長期的に減少していること、小麦が特に作柄が良かった前年に比べて単収が減少したこと」を挙げている。いずれにせよ、これで30年には食料自給率45%に引き上げるという政府目標の達成は困難になってきているといえる。

 日本の食料自給率の世界的な位置はどうなのか、主要先進国で見てみると、各国のデーターが揃っている18年で比べると、トップはカナダ266%で以下、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、スペイン100%、ドイツ86%、イギリス65%、オランダ65%、スウェーデン63%、イタリア60%、スイス51%、韓国35%で、日本は韓国をやっと上回る37%と、主要先進国では最下位に次ぐ位置となっている。韓国はこれまで日本を上回っていたが、米韓FTAを締結してから自給率が急速に低下している。

 カロリーベースの食料自給率は、私たちが食事を通じて摂取するカロリーの自給率を意味している。例えば、国産牛肉や国産豚肉を食べたとしても、その牛や豚が餌としている飼料がすべて輸入飼料に依存したとすると、摂取カロリー自給率は0カロリーとなる。日本の飼料自給率は25%と飼料の4分3を輸入飼料に依存しているため、牛肉の自給率は9%、豚肉6%、鶏肉8%、鶏卵12%、牛乳・乳製品26%となる。これは、輸入飼料の輸入が途絶したら、日本の畜産酪農生産は家畜に餌を与えることができず、たとえば牛肉生産は現状の9%の水準になるということを意味している。

 政府が2003年に発表した「不測時の食料安全保障マニュアル」では、日本で食料輸入が途絶した場合、私たちの食卓がどうなるかを例示している。生きていくために必要な1日当たりの摂取カロリーは2020キロカロリーといわれているが、食料輸入が途絶した場合、そのカロリー量を供給する食事メニューは次のようになっている。

・朝食:茶碗1杯のご飯、蒸しジャガイモ2個、糠漬け1皿

・昼食:焼き芋2本、蒸しジャガイモ1個、りんご4分の1個

・夕食:茶碗1杯のご飯、焼き芋1本、焼き魚1切れ

・その他:2日に1回1杯のうどんと味噌汁、3日に1回2パックの納豆、6日に1回コップ1杯の牛乳。7日に1回1個の卵、9日に1回108グラムの食肉

 食事は、ご飯、ジャガイモ、焼き芋主体で、食肉は9日に1回、それも108グラムしか食べることができない。

地球温暖化と農業生産

 今、政府が2003年に「不測時の食料安全保障マニュアル」で描いた食料輸入途絶の危機が迫っているともいえる。それが地球温暖化による食料生産への影響である。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は8月9日、第5次報告書以降8年ぶりに第6次評価報告書と第1作業部会報告書の概要を公表し、世界に大きな衝撃を与えた。

 報告書は、地球温暖化の原因を人間の影響と断定し、これまでの予想より10年早く、世界の気温上昇が21~40年に1.5℃に達するとの予測を明らかにした。また、報告書は地球温暖化の脅威の実態を新たに明らかにした。

・もっとも暑い日、気温がもっとも上昇するのは一部の中緯度帯、半乾燥地域および南米モンスーン地域で、地球温暖化の約1.5~2倍の速度になる

・熱波と干ばつの同時発生、火災の発生しやすい気象条件(高音、乾燥、強風)、複合的な洪水(極端な降雨や河川氾濫と高潮の組み合わせ)

・温暖化した気候では、極端な雨期又は乾期、並びに気象の極端現象の深刻さが増大。世界規模では、地球温暖化が1℃進行するごとに極端な日降水量の強度が約7%上昇

 これらが世界の農業生産に深刻な打撃を与えることは、論を待たない。今年、熱波でカナダとアメリカで小麦生産が減少し、その影響で今、日本の小麦価格が上がっている。今後さらに深刻な影響が日本を襲うことになるであろう。

(文=小倉正行/フリーライター)

●小倉正行

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。

主な著書に、『よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答』『輸入大国日本変貌する食品検疫』『イラスト版これでわかる輸入食品の話』『これでわかる TPP 問題一問一答』(以上、合同出版)、『多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴』『放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る』(以上、新日本出版)、『輸入食品の真実 別冊宝島』『TPP は国を滅ぼす』(以上、宝島社)他、論文多数。