「コンビニは通える引きこもりたち」の知られざる実態…理解や支援を難しくする“思い込み”

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男子寮の外観。約30人の寮生が生活し、女子寮では3人が生活している
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ニュースタート事務局が運営しているパン屋の内観。寮生たちは事務作業や協力農家での農作業などから、業務を選んで励んでいる

 仕事体験での業務に慣れてから、外部で働くための就職活動をスタート。正社員やバイトなどの就労先が決まり、3カ月間仕事を継続して精神面・生活面が安定していたら、寮を出て一人暮らしを始める。それが、ニュースタートからの“卒業”だという。

「就労支援はあくまで私たちの支援の一部ですが、就労率は95%に達しています。平均滞在期間は1年半で、9割以上の人が一人暮らしをして自活を始めますね。みんな、バイトを続けるのは苦ではないようで、自分のペースで働いて生活費を稼いでいます。その後、実家に戻すと再び引きこもってしまうケースを多く見てきたので、ニュースタートでは“一人暮らし”を前提に支援しているんです」(同)

 なかには、入寮後3カ月で職を決めて寮を出ていく人もいるそうだ。久世さんは「引きこもりの自活は難しい」という先入観も支援が進まない要因では、と分析する。

「ほかの支援者の方の意見はわかりませんが、これまで1600人以上の事例に触れてきた私たちの見解では『大半の人が自活できて、時折難しい人がいる』という印象です。当事者がどこにSOSを出せばいいかわからないという日本の現状も相まって、苦しい状況が固定化されてしまうようです。今後、引きこもり高齢化はさらに加速していきます。まずは、自治体や支援団体など相談の窓口がたくさんあることを当事者に知ってもらうことが先決かもしれません」(同)

 理解や支援が進まない引きこもり問題。見て見ぬ振りを続けた先には、多様な人々を認められない“冷酷な社会”が待ち受けている。

(文=真島加代/清談社)

●久世芽亜里(くぜ・めあり)
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。ニュースタート事務局では現在、親の相談や事務、広報を担当。

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