「アスパラガスに血圧降下作用」理化学研究所が発見…新型コロナの重症化予防にも効果?

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「PIXTA」より

 アスパラガスはユーラシア大陸原産のユリ科植物で、食用にしているのは主茎と呼ばれる部分です。ギリシア・ローマ時代には珍味として珍重されました。日本へは、江戸時代にオランダから鑑賞用としてもたらされました。

アスパラの 葉にも花にも 今朝の雨(飴山實)

 これを読んでいるビジネスパーソンのみなさんの中には「アスパラガスを鑑賞するの?」「アスパラガスに花が咲くの?」と思われた方も多いことと思います。あまり知られていませんが、アスパラガスは食用にできる時期を過ぎるとかなり大きく成長し、ユリの花を花径が1cmにも満たないミニチュアにしたような可憐な花を多数咲かせ、非常にかわいい観賞用植物になるのです。

 食用として19世紀後半に日本に再導入されましたが、当初はアスパラガスの独特の臭いが日本人に好まれず、もっぱら欧米への輸出用缶詰に使うホワイトアスパラガスの栽培が行われていました。国内で食用に供されるようになったのは20世紀半ばのことです。

 主茎の表面についている小さな突起は、葉に相当する包葉と呼ばれるものです。地下には10年以上にわたって生き続ける地下茎があり、そこから主茎が地上に向かって伸びていきます。主茎が伸びる速度やタイミングはまちまちなので、手摘みで収穫しなければならず、栽培に手間のかかる高価な野菜の一つです。

 野菜や果物がどの程度健康に良いかを判断する考え方として、一般には色が濃いほど健康に良いと考えて差し支えありません。色が濃いということは太陽の光をたくさん浴びて育ったことを示しており、葉に当たる光が多いほど植物は多くのエネルギーを処理する必要があり、その結果、つくり出される色素や抗酸化物質も多くなります。

 植物色素の多くは人間の健康に良いことがわかっています。キャベツなどのように結球する野菜は内葉の色が薄く、内葉に含まれるカロテンなど栄養素の量は、色の濃い外葉に比べるとかなり少ないことがわかっています。アスパラガスも濃い緑色をしており、皮に相当する部位には栄養素や抗酸化物質が特に豊富です。

 抗酸化物質は体内に発生する有害な活性酸素の除去に寄与し、健康に貢献しますが、最近、日本の理化学研究所の研究チームが、アスパラガスに含まれる成分「アスパラプチンA」が、ある特殊な酵素を阻害する作用を持つことを明らかにし、話題になっています。

 近年、食品や医薬品の分析研究には、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析計(LC-MS/MS)という装置が用いられることが一般的です。この装置は事前処理で液状化した試料を装置に導入することによって、その中にどのような成分が含まれているか、また、それらの成分はどのような構造を持っているかを一度に明らかにすることができる、非常に優れた装置です。今回はこのLC-MS/MSを用いて、アスパラガスに含まれる微量成分を網羅的に解析しました。その結果、含硫化合物アスパラプチンAが見つかりました。

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アスパラプチンAの構造式

アスパラガスの成分が新型コロナに効く?

 ところで、全国で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスである新型コロナウイルスは、体内に侵入した後に、気道の細胞表面にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)受容体に結合することが知られています。

 ACEの本来の役目のひとつは、血圧の制御です。ところが、新型コロナウイルスはACEに結合することから、ACEの働きを妨害する「ACE阻害薬」または「アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)」を新型コロナウイルス感染症罹患前から服用している患者では、新型コロナウイルス感染症に関連した意識障害が少ないことが、横浜市立大学による別の研究で明らかになっています。