中国のエンターテインメント業界では一握りのタレントのギャラはうなぎ上りで、若者たちが華やかで高額な収入を得る可能性がある芸能界に憧れるのは自然の流れだ。しかし、「文革世代」で、水道も電気も通っていないような農村部で堆肥の桶の棒を肩にかけて長い距離を運ぶなどという苦行を10代で経験した習氏からみれば、今の若者は「奮闘」することを嫌がり、「中国の偉大な復興」という「中国の夢」をつぶしかねない軟弱そのものの「反革命分子」と映っているのかもしれない。
(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)
●相馬勝/ジャーナリスト
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。