富士フイルム、事務機メーカーから先進医療企業への転身に成功…過去最高益も視野に

 米ゼロックスとの資本関係の解消に伴い、ゼロックスブランドは使えなくなった。4月1日に富士ゼロックスは社名を富士フイルムビジネスイノベーションに変更した。中計では事務機器などのビジネスイノベーション部門の24年3月期の売り上げ目標を8200億円、営業利益820億円とした。DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進の波に乗りたいと考えている。

 複合機の世界シェアは9%。リコーやキヤノンなどに次ぐ第5位である。英語圏ではコピーすることを「ゼロックスする」という。ゼロックスの知名度は高く、これまで支払ってきた年間100億円のブランド使用料以上の有形無形のメリットがあったはずだ。

「米ゼロックスへの製品供給がどうなるかだ。これが富士フイルムのアキレス腱となることだってある」との指摘もある。現在は、富士フイルムの工場で生産する複合機を米ゼロックスに供給しているが、24年に契約の更新期を迎える。もしゼロックスが調達先を切り替えれば、工場の稼働率は一気に落ち込む。

 欧米進出はOEM(相手先ブランドによる生産)供給から始めることになる。自社ブランドで欧米に進出するといっても、無名のブランドで成功を収めるのは至難の業(わざ)だ。脱ゼロックスは大きな試練である。カメラや事務機中心からバイオ医薬品の大型投資をテコに総合ヘルスケアカンパニーへと業態を大転換する。後藤禎一社長兼CEOの正念場だ。

 長年親しまれてきたブランドを失うことが致命傷になることはゼロではない。

(文=編集部)