現在、東証1部に上場していない有力企業がどう行動するのかも、気になるところだ。フリマアプリのメルカリはマザーズ、日本マクドナルドホールディングスはジャスダックという新興市場に上場している。両社とも「プライム市場の基準をクリアしている」(前出の大手証券会社のアナリスト)。
創業家の持ち株が多い食品メーカーや、メガバンクの傘下に入っている消費者金融など、判定結果を明らかにしない企業は少なくない。「基準を満たさなかった」と情報開示した東証1部上場企業の数は、8月現在、10社を少し超えただけの状態という。
例えば「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(柳井正会長兼社長)は、柳井一族が株式を支配しており、流動化比率を35%以上に高めるために、どのような施策を打ち出すかが注目されている。業績の下方修正に加え、「プライム市場に適合」の発表がないことから市場関係者は疑心暗鬼になっている。このためだろうか。株価は大きく下落し、8月3日には7万2430円の年初来安値をつけた。年初来高値は3月2日の11万500円だから35%下落したことになる。
どの市場区分を選ぶかを上場企業が申請するのは9月以降になる。タイムリミットは年内とみられ、投資家にとっても重要な情報を積極的に開示しようとしない企業があることが不信感を募らせている。株主ファーストとはなっていないのが実態だ。
プライムに残るためには、もうひとつ隠れたハードルがある。「より高度なガバナンスが求められるガバナンスコードで独立社外取締役は3分の1と定められている」(外資系証券会社のアナリスト)。
東証1部上場企業の72.8%が社外取締役の条件を満たしているとされるが、裏を返せば、残り27.2%は条件を満たしていないということだ。「社外取締役争奪戦のバブルが起きることは必定だ」(前出のアナリスト)。社外取締役の1社当たりの年間報酬は上昇を続け、1500万円を超えてきた。1、2年前には「1000万円が相場」(同)だったから、まさにバブルである。
1社当たり1500万円として数社やれば、かなりの金額になる。弁護士や学者、有名メーカーの元経営者などがバブルの恩恵に浴することになりそうだ。三菱電機や東芝の社外取締役が機能していなかったことが問題になり、「元官僚の人気は急落中」(社外取締役の動向に詳しい人材派遣会社)という。
一方、流通時価総額が100億円を下回る地域金融機関は暑い夏を過ごしている。持ち合い株の削減や自社株買いなどの対策を必死で練っている。「無理してプライム市場で上場を維持するコストを考えれば、金融機関としての本来の使命を考え直す良い機会になるのではないか」(有力地銀の頭取)との正論もあるが、経営トップが体面を重んじる“地方の殿様”が地銀、第2地銀の特徴である。
(文=編集部)