東京メトロ、株式上場へ、時価総額は小田急・東急に匹敵か…新線「品川地下鉄」整備が加速

 業績が低迷する都営地下鉄と東京メトロが経営統合すれば、東京メトロ株式の市場の評価が下がる可能性が強く、国は計画通りの売却益を得られなくなるため、これまで統合に難色を示していたという背景もある。

 都が東京メトロと都営地下鉄の統合を断念する見返りに、国は東京メトロの株式公開を認め、国と都が新線建設に必要な財政支援を行うことになった――。答申を、こう深読みする向きもある。政府は東京メトロ株を売却でき、都は国の後ろ盾を得て新線を建設できるわけで、双方の顔が立つ。国交省は延伸に向けた調査費などの必要経費を22年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。

東京メトロの時価総額は東急、小田急と肩を並べる

 政府による東京メトロ株売却期限の27年度に向けて、東京メトロの上場計画が本格化する。株式市場では東京メトロが上場した場合、どの程度の企業価値(時価総額)になるかに関心が集まる。

 東京メトロの法人名は東京地下鉄株式会社。山村明義社長は東北大学工学部卒の鉄道技術者で17年6月から社長を務める。9路線、195.6㎞、180駅の地下鉄を運行しており、資本金は581億円、従業員は9881人である。どの程度の時価総額になるかは、関東の私鉄各社と比較するとわかりやすい。

 東京地下鉄の21年3月期の連結決算は売上高が20年3月期比31.7%減の2957億円、営業損益は402億円の赤字(20年3月期は839億円の黒字)、最終損益は529億円の赤字(同513億円の黒字)だった。04年の民営化後、初めて赤字に転落した。新型コロナの影響による外出自粛やテレワークの拡大で、定期券の運賃収入が前期に比べて30.7%減、定期外の運賃収入が39.2%減と大幅に悪化した。

 業績の悪化は他の関東私鉄も同じである。時価総額でみると小田急電鉄が9404億円、東急が9260億円(8月6日終値時点)。東京地下鉄(東京メトロ)の売上高は業界6位にとどまるが純資産は業界2位に相当する。上場すれば、時価総額は小田急、東急と肩を並べ、9000億円の大台に乗ると試算されている。

【関東の私鉄各社の業績(21年3月期)】(単位:億円)

        売上高 最終損益   純資産  時価総額

・東急     9359  ▲562    7525   9260

・東武鉄道   4963  ▲249    4531   5912

・小田急電鉄  3859  ▲398    3524   9404

・西武HD     3370   ▲723    3856   3842

・京王電鉄   3154  ▲275    3443   7700

・東京地下鉄  2957  ▲529    6444    ?

(HDはホールディングスの略。▲は赤字。時価総額は8月6日終値時点)

(文=編集部)