東京都に4回目の緊急事態宣言が発令されているが、営業時間短縮要請などに応じる飲食店への協力金の支給が遅れている。東京都産業労働局のホームページを見ると、東京都の支給状況は4月1~11日は約8割だが、4月12日~5月11日は約5割となっている(7月16日時点)。
実際、飲食店の現場はどのような状況なのだろうか。千葉県でスナックを経営するマスターに聞いてみた。
「うちは去年12月が最後の営業で、1月からずっと店を閉めてるよ。協力金は、3日前に5月分がようやく入った。去年もらった家賃支援給付金に手をつけていなかったから、それでしのいでいたんだ。協力金は1日4万円×20日分で80万円だけど、家賃やその他を支払うと、手元には25万円しか残らないよ。
従業員は12月で辞めてもらったから人件費はかからないけど、けっこう大きいのが司法書士に支払う金額なんだ。協力金の10%=8万円をもっていかれるけど、これを払っても頼んだ方がいい。というのもね、この書類が足りない、ここが違う、なんて言われてもたついていると、それだけ支払いが遅れるわけだ。それでなくたってわけのわからない書類だから。でも、司法書士に頼めば、店に休業の知らせを貼って、それを撮影して提出すれば済むからね。全国の司法書士は忙しくて仕方ないんじゃないかな」
ちなみに、シャッターが閉まったままで休業の知らせがない店は、つぶれたケースだという。
また、協力金の支払通知書も手元に届かないそうだ。
「いつ支払われるかわからないから、全国の飲食店が怒っているんだよ。俺なんか毎日コンビニで残高確認をして、増えていたら銀行に通帳記入をしに行ったよ。銀行口座は一つしか持っていないから、どこから入ったお金かを確認するためにね。
よく『隠れて店を開けちゃえば』なんて言われたけど、もしバレたら過去の協力金も没収されるんだ。誓約書に印鑑を押したしね。だから、今は黙って耐えている。開けている店は連日満員だけどね」(前出のマスター)
ちなみに、現在のまん延防止等重点措置(7月12日~8月22日)における協力金は「1日3万円×42日分」で、早めに支払われるそうだ。1日あたりの金額も含め、条件がコロコロと変わっているのも特徴だ。
それにしても疑問なのは、持続化給付金との違いだ。昨年、支払い条件などのシステムがスピーディに整備され、申請から約2週間で支払われた持続化給付金に対し、なぜ今回の協力金は遅れているのだろうか。
ある新聞記者は、こう語る。
「昨年と今年の状況の違いですよ。昨年はコロナがどういうものかわからず、多くの人が仕事を休んだり減らされたりました。政府がスピーディに対応したのは、経済を回すこともそうですが、内閣を持続させる意味合いもあったと思います。国民全体が苦しんでいるときに不手際が生じると、内閣が終わってしまう可能性がありますよね。あれから1年が経ち、コロナ禍の対処法がわかってきました。飲食業者は国民全体の数%であり、即座に対応しなくても大丈夫とみているのでしょう」
飲食店への協力金の支払いは、政策の優先順位としては上位でないというわけだ。ましてや国民の数%であれば、選挙への影響も小さくて済む。
「見殺しにされている」と嘆く飲食業界の人々は、次の選挙で自民党に投票しないだろう。
(文=井山良介/経済ライター)