「週刊文春」(7月8日号)は、デジタル庁のキーマンである内閣官房IT総合戦略室の向井治紀室長代理が昨年10月と12月にNTT幹部から、昨年11月にはNTTデータ幹部から、それぞれ高額の接待を受けた疑いがあると報道した。
向井氏は旧大蔵省(現財務省)の出身。理財局次長などを経て、10年から内閣官房でマイナンバー制度の立ち上げに携わってきた。霞が関では「ミスター・マイナンバー」の異名をとる。現在は、今年9月に発足予定のデジタル庁の設置準備を担う内閣官房IT総合戦略室の室長代理と内閣府番号制度担当室長を兼務している。平井デジタル相の側近として重用されている。
平井氏は昨年9月16日、菅政権発足とともにデジタル相に就任した。「文春」によると、平井氏は就任直後の昨年10月2日と昨年12月4日、NTTグループが運営する高級会員制レストラン「KNOX」で、向井氏とともにNTTの澤田純社長から接待されていた。昨年11月9日に「KNOX」で向井氏がNTTデータ常務の接待を受けていた。
平井氏は7月2日午前の閣議後の記者会見で、「会食したのは事実ではないかと、事務方から報告を受けた」と語った。利害関係者に当たるかどうかは「私が判断するものではない」とした。同氏は6月25日の記者会見では、「2016年以降に8回、NTT幹部と会合した。このうち2回はデジタル改革担当相に就任した昨年9月以降だったが割り勘で支払った」とし、関係業者から供応接待を禁じた大臣規範には抵触しないとの認識を示していた。
6月25日の記者会見では、「私と、同席した事務方の分は(費用を)きっちり払っている」と強調し、会食した理由については「多くの方々と最新の技術動向を意見交換しないと、私のポジションは務まらない」とした。さらに「(会食では)個別のプロジェクトの話をするはずがない」と述べている。
NTTグループは、向井氏が幹部として所属する部局の事業を数多く受注している。内閣官房IT総合戦略室が開発を担う五輪アプリは、今年1月14日、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)を中心とした5社のコンソーシアムが約73億円で受注。その後、事業費は削減され、NECとの契約は解除された。しかし、NTTコムは引き続き23億円の受注を確保した。
14年には内閣府が発注したマイナンバーの中核システムをNTTコムやNTTデータなど5社が約114億円で受注するなど、NTTグループはマイナンバー関連事業を次々と獲得している。マイナンバーカードはデジタル社会構築の鍵を握るといわれている。マイナンバーの企画立案の所管は現在の総務省や内閣府から、新設されるデジタル庁に移る。
「マイナンバーの企画立案を担うのがNTTグループという構図がもっとはっきりしてくる」とIT業界の関係者は予測するが、果たしてそうなるのか。
(文=編集部)