そのために足腰をどう鍛えるかという一番地味なところが人材育成です。人材育成は職人だけでなく、ホールスタッフも、商品のおいしい理由を学び直すとか、自分たちのブランドコアは何か、レストランサービスの基本を見つめ直すとか、そういう研修もやっています。それから、生産性向上を助けるのはDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
――お客が自身のスマホを使用して注文するモバイルオーダーシステムなどでしょうか。
野本 はい。しかし、巷にたくさんあるモバイルオーダーでは私たちの強みが生かせない、あるいは導入することで強みが消えてしまうと思っていました。結局は生産性が上がらないシステムばかりでした。モバイルオーダーで多いのは、商品名と写真がずらりと並んだインターフェースです。当社で導入するのは、そうした情報に加え、商品のPR文や料理に合うおすすめアルコールまで表示されるものです。
配膳ロボットみたいに単純に効率化を進めるのではなく、外食として選ばれる理由は何かということを、もう一度再認識できるようなシステムです。今行っていることは、コロナ対策というだけでなく、コロナをきっかけに事業の本質に立ち返らせてもらったということです。
コロナ禍が収まらないなか、外食産業にとっては先が見えない状況が続く。野本氏は「パラリンピックが終わるまでは我慢しなきゃいけないだろうという想定で動いている」と話す。飲食各社はコロナ収束後を見据えてもがいている。
(文=横山渉/ジャーナリスト)