株式会社リクルートが発行する「都心に住む by SUUMO」6月号では、ポストコロナの時代に向けて「東京2030 未来都市」を特集している。都心の再開発が進む中、生活様式の変化で郊外の需要が高まるとも言われているが、未来の東京はどうなるのか。「都心に住むby SUUMO」の柿崎隆編集長に聞いた。
――東京一極集中が叫ばれる中で再開発が進んでいますが、東京の街の未来について、どう見ていますか。
柿崎隆氏(以下、柿崎) 新型コロナが収束すれば、都心部の求心力が再び高まります。報道では東京一極集中から郊外への分散や多極化が言われていますが、都心の需要は引き続き堅調だと予想しています。テレワークの普及に伴い、地方に移住する動きも一部でありますが、大多数の人々は交通・生活・教育の利便性を求めるというトレンドは変わらないとみています。
いきなり“脱都心”にはならないという見解は、取材先のデベロッパーも同じでした。これからの都心の注目エリアは「東京駅~日本橋周辺」「虎ノ門~麻布台」「渋谷」「品川~高輪ゲートウェイ」「西新宿」、湾岸エリアの「豊洲、芝浦周辺」です。いずれも、再開発に力を入れている点が共通しています。
――それぞれのポイントを教えてください。
柿崎 東京駅周辺では、三菱地所が手がける超高層ビル「Torch Tower」(東京駅前常盤橋街区B棟)が2027年度に完成予定です。また、三井不動産が開発している「東京ミッドタウン八重洲」が22年夏(or8月末)に竣工予定です。八重洲では東京建物も再開発を進めています。三井不動産は創業の地の日本橋でも「日本橋再生計画」を手がけており、首都高速の地下化プロジェクトも(35年完成を目指し)始動しています。今後十数年で、東京駅周辺から日本橋に至るエリアは大きく変貌することになります。
――虎ノ門~麻布台は、どのような点に着目していますか。
柿崎 森ビルが手がける「虎ノ門・麻布台プロジェクト」は「ヒルズの未来形」と位置付けられ、注目を集めています。また、ラグジュアリーホテルチェーン「アマン」とのパートナーシップにより、「アマンレジデンス 東京」「ジャヌ東京」が23年に開業する予定です。こうした開発により、訪日外国人やビジネスエグゼクティブを惹きつけ、職住融合型の国際的なビジネス拠点を形成していくのではないでしょうか。
――渋谷の再開発は近年、話題になっていますね。
柿崎 23年度に竣工予定の「渋谷駅桜丘口地区再開発」と27年度に開業予定の「スクランブルスクエア第II期」の計画が進んでおり、これで100年に一度と言われる「渋谷大改造」も一服すると思われました。しかし、東急が東急百貨店本店やBunkamuraの再開発計画を発表したことで、駅周辺のみならず一帯への波及効果がありそうです。文化村通りも大きく変わっていくことが予想され、渋谷を中心としたエリアはさらに変化していくでしょう。
――品川~高輪ゲートウェイは交通面での起点となりそうです。
柿崎 同エリアの「第I期まちびらき」は24年度に予定されており、住宅、オフィス、商業、文化、教育施設が一体化した、新たな街が誕生することになります。その波及効果は芝浦エリアまで広がるでしょう。品川は羽田空港に近く、リニア中央新幹線の起点にもなるため、将来的には名古屋や大阪へのアクセスが飛躍的に良くなります。この利点を生かし、国際的なビジネス拠点、さらには都心と世界を結ぶゲートウェイとしての価値が高まります。