では、最終回は是が非でも観るべきか? 初回から欠かさず観ていたという、ある映画配給会社の関係者はこう語る。
「私も坂元裕二さんの脚本には驚かされっぱなしで、もうワンクールは見続けたいと思うほど、ハマってます。『大豆田とわ子と三人の元夫』は毎回、冒頭にその回で何が起こるのかのダイジェストを見せ、それを視聴者が確認していくという構成なのですが、そういった仕掛けもお見事。YouTubeでいうところのサムネイルというか、『ネット動画全盛時代に連ドラが観られるにはどうすればよいのか』という命題のひとつの解がここにあり、きわめて効果的です。そして、冒頭でダイジェストを見せられても、それで「今回はこういう感じか」とはならず、毎回、最後には視聴者を“まったく違うところ”に連れていってくれるのです。
今まで観ていなかった方にも、ぜひ動画サブスクで1話目から観ていただきたいところなのですが、仮に最終回から観ても、本作はきっとおもしろいはず。いろんな仕掛けが満載のドラマなので、ネタバレなど気にしないで楽しめると思いますよ。
今年1月、コロナ禍で映画館が封鎖されるなかで公開が始まった『花束みたいな恋をした』(主演:菅田将暉・有村架純、脚本:坂元裕二)は、興行収入37億円を超えるほどの大ヒットを記録。菅田さんが坂元さんの脚本を熱望して実現したという企画で、実際に菅田さんはこの脚本を大絶賛したといいます。坂元さんのオリジナル脚本にハマる30代40代の女性はちゃんとお金を持ってる層なので、今後も坂元さんオリジナルの脚本は映画界で争奪戦が繰り広げられるはず。つまり、連ドラで視聴率が低くとも、彼の脚本の価値はまったく下がっていないといえるわけです」
視聴率に左右されない人気脚本家・坂元裕二が手がける『大豆田とわ子と三人の元夫』。今まで観たことがない読者は、最終回からチェックしてみるのも一興かもしれない。
(文=藤原三星)
●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>