6月といえば、葉物野菜の旬のものが店頭に並び始める季節です。レタス、モロヘイヤ、クウシンサイ、オオバ、サラダナなどなど。いずれも1年中食べることができる食材ですが、本当の旬はこれからの季節です。
また、6月は梅雨のシーズン。梅雨といえば「ジメジメ」という表現がしばしば使用されますが、近年は気候変動の影響か、滝のような豪雨が降るようになりました。あわせて、新型コロナウイルス感染症の影響もあって、外へ出たり体を動かしたりする機会が減って、これまで以上に栄養価の高い食品で体調を整え、健康を維持する必要があります。
これから旬を迎える葉物野菜の特徴は、硝酸塩を多く含むことです。たとえばレタスやクウシンサイ、サラダナなどは1kgあたり1~2gの硝酸塩を含みます。硝酸塩はさまざまな食品に自然に含まれるほか、ハムなどの加工肉製品の防腐剤としても添加されている化学物質です。
かつて、食品中に含まれる硝酸塩は体内で発がん物質の生成に関与する恐れがあるなどと言われ、一方的に悪者扱いされてきましたが、最新の研究では「硝酸塩=悪」とは言い切れないことがわかってきています。WHO(世界保健機関)により設定されていた硝酸塩の許容摂取量は、2010年に根拠不十分として廃止となりました。また、通常の食生活で摂取する程度の硝酸塩であれば健康に影響はないというデータも蓄積されています。
それどころか、近年では硝酸塩が体に与える良い影響も見いだされつつあります。たとえば、食事で摂取する硝酸塩は血圧の低下や血管内皮機能の改善に寄与することや、訓練されたアスリートの運動パフォーマンスを向上させることなどが示唆されています。
オーストラリア・エディスコーワン大学栄養研究所が最近発表した論文によると、加齢によって衰えた筋力を増強したいビジネスパーソンは、レタスなど硝酸塩を多く含む葉物野菜を毎日摂取すると効果があるかもしれません。硝酸塩を豊富に含む野菜を多く摂取している人は、摂取していない人に比べて、高齢になっても筋力や身体機能が高いことが明らかになったのです。
研究開始時の年齢が40代後半の男女3759人の実験協力ボランティアが参加したこの研究では、12年間にわたり、食生活と身体活動の追跡調査が行われました。実験参加者の硝酸塩摂取量の中央値は1日当たり65mg(葉野菜換算で1日数十g)前後でした。
摂取量の多い・少ないで実験参加者を3群に分類して解析したところ、90mg(葉野菜換算で1日100g以上)以上を摂取した人たちは、摂取量が50mgを切る人たちに比べて、12年間にわたり筋肉の機能が高く維持されていることが明らかになりました。
この研究は、硝酸塩の豊富な葉物野菜を多く摂取する食習慣を取ることで、加齢によって低下する筋力を増強できる可能性を示唆しており、前述したアスリートに対する良い効果とも矛盾しません。
在宅勤務が続く多くのビジネスパーソンは、通勤が運動だったことを痛感しておられることと思いますが、何も対策をせずに、毎日を自宅のイスに座って過ごすと筋力は確実に低下していきます。「トレーニングジムは新型コロナで休業中だし、自宅で自力運動を継続するのは難易度が高いなぁ」と思っておられる方は、葉物野菜を毎日の食生活に取り入れることが、筋力維持だけでなく、栄養バランスの取れた食生活の実践の観点からも推奨されます。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質保証部)