読書はためになる。将来のために読書するとよい。だれもが子どもの頃に言われたセリフなのではないか。それが頭の片隅にあるため、わが子に本を読むようにと言う親が多い。読書が学力向上につながるなら、何とか読書習慣をつけさせたいと思うのが親心だ。
でも、本を読むように言っても、子どもは素直に読むわけではない。読書が学力向上につながるというのは本当なのだろうか。それがはっきりしないことには、親としても子どもの読書習慣づくりになかなか本気に取り組めない。
読書の効用については、さまざまなことが言われているが、本当のところどうなのか。そんな疑問をもつ人もいるだろう。そこで、実証的データを見てみよう。
ただ直観的に言われているだけで、科学的根拠などないと思っている人がいるかもしれないが、読書の効果に関する各種調査データをみると、読書には本当に知的発達を促す効果があるようだ。
たとえば、国立青少年教育振興機構の「子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究」によれば、子どもの頃によく読書していた中高生ほど、意欲・関心が高く、論理的思考能力が高いといった傾向がデータによって示されている。
意欲・関心については、子どもの頃の読書活動が多いほど、「何でも最後までやり遂げたい」「わからないことはそのままにしないで調べたい」「経験したことのないことには、何でもチャレンジしてみたい」というように意欲や関心を強くもっていることが示された。
論理的思考能力については、子どもの頃の読書活動が多いほど、「複雑な問題について順序立てて考えるのが得意である」「考えをまとめることが得意である」「物事を正確に考えることに自信がある」というように論理的思考能力に自信をもっていることが示された。
さらには、そのような傾向は、就学前から小学校低学年の頃に絵本をよく読んだ者ほど顕著であり、また自分では本を読めないそうした年頃に家族から本や絵本の読み聞かせをしてもらったり昔話を聞かせてもらったりしたことの多い者ほど顕著であることが示された。
その他の調査データでも似たような傾向が示されており、子ども時代に読書をすることが知的発達を促すというのは事実と言えそうだ。また、自分ではまだ本を読むことができない幼児期や小学校低学年の頃に親が本や絵本の読み聞かせをしたり、昔話をしたりといったことも、読書と同じく知的発達を促す効果をもつようだ。
では、子ども時代の読書経験は、どのような形で知的発達を促進するのだろうか。
第1に、読書によって語彙力が高まるということがある。読書量が多いほど語彙力が高いということは、心理学や教育学の分野において、多くの研究によって示されている。小学校高学年の児童を対象にした研究でも、読書量の多い子のほうが語彙力が高いことが示されている。就学前の幼児を対象とした研究でも、読書量の多い子ほど語彙力が高いことが示されている。
本を読むということは、多くの言葉に触れることでもある。ゆえに、読書によって多くの言葉に触れている子と、読書をあまりせず言葉に触れる機会の少ない子では、獲得している言葉の数が違って当然だろう。言葉をたくさん知っていれば本を何の苦もなく読むことができるが、言葉をあまり知らなければ本を読むのに苦労する。そこに読書と語彙力の相互作用が生じる。
つまり、よく本を読む子は、語彙力が高いため本を読むことが苦にならず、読書を楽しむことができる。それによって、ますます語彙力が高まり、読書好きになっていく。そのように好循環が働く。