新型コロナウイルス感染症に関するニュースで、「感染した重症患者のなかで約30%に血栓がみられる」「血栓が肺にとんで肺血栓症を引き起こす可能性が高い」などと、「血栓」という言葉をよく耳にします。また、飛行機内の乾燥した環境の中で長時間、体を動かさないことで血流が悪くなり「血栓」ができやすくなるエコノミー症候群も有名です。
血栓とは、血管の中にできる血の塊をいいます。血栓ができると血液の流れを止めてしまうため、先の組織へ血液が届かなくなってしまいます。そうなると、血液が運んでいる栄養が組織へ供給されないため、正常に機能できなくなり、体へさまざまな影響を及ぼし血栓症という病気を発症させます。脳の血管が詰まれば脳梗塞、心臓の血管が詰まれば心筋梗塞になります。
血液をサラサラにする食品として有名なのが、納豆、玉ねぎではないでしょうか。実は、これらの食品は食べ方に気をつけないと、サラサラ効果が思ったほど期待できないかもしれません。
玉ねぎは、硫化アリルなどの含硫化合物に血栓予防効果が期待できます。通常は、繊維に添って切る事が多いと思いますが、繊維に対して直角に、できる限り薄く切るようにして細胞をたくさん切断したほうが、含硫化合物が新たにつくられます。そして、すぐ食べるのではなく、切ってから1時間ぐらい放置してから食べたほうが、辛み成分が一部揮発しますし、含硫化合物の効力が高まります。
玉ねぎのにおいが気になるため、薄切りにして水にさらすことがありますが、硫化アリルが流れ出てしまいますので、できればさらさないほうが良いです。
次に、納豆ですが、いつのタイミングでどのようにして食べていますか?
納豆には、納豆キナーゼという酵素が含まれ、血栓予防効果を示すというのは有名です。納豆キナーゼは酵素のため、高温の調理では効果が期待できません。また、冷蔵庫から出したばかりの低温ではなく、室温に戻してから食べたほうが、納豆キナーゼの活性が高まります。食べる20分くらい前を目安に、冷蔵庫から取り出してください。
また、納豆は夜に食べると血栓予防に効果的だといわれますが、これは、脳梗塞や心筋梗塞といった血栓症の発症頻度は朝方に多いという研究結果からなのですが、実は朝ばかりではなく夜にも多いことがわかっていますので、一概に夜に納豆を食べると良いといえないでしょう。
ところで、近年の研究により、玉ねぎや納豆のほかに、血栓予防が期待できるお酒がみつかりました。それは焼酎です。焼酎のなかでも本格焼酎(単式蒸留機で蒸留したものをさし、沖縄の泡盛も含まれる)に血栓を溶かす効果があるらしいという研究結果があります。
本格焼酎は、t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)、ウロキナーゼの分泌、活性を高めるというのです。
とはいえ、たくさん飲めば効果がアップするわけではありません。効果が期待できるのは、約130ml程度という情報もありますが、厚労省は生活習慣病のリスクを高める飲酒量を1日あたりの純アルコール摂取量で、男性40g以上、女性20g以上と定めています。ここから相当量を換算すると、男性200ml未満、女性100ml未満です。
飲酒するときは水分補給も怠らないことが重要です。水分をこまめに摂ることにより、代謝を促すことができます。水分が不足すると、脱水を起こしやすく、血栓をつくりやすくすると考えられています。
飲酒時だけでなく、これからの季節、汗などで水分が失われやすくなるので、水分補給をまめに行って血液の流れをよくして代謝を促しましょう。長時間マスクをしている状況なので、体温調節もままならず脱水症状になりやすいので注意してください。
水分補給の目安量は、1日あたり1.5l程度、ペットボトルの水を1日かけて少しずつ飲んでいきましょう。日ごろから食生活や水分補給に気をつけて、血液サラサラを心がけましょう。
(文=森由香子/管理栄養士)
●森由香子/管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士
東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科 人間生活科学専攻)修士課程修了。 クリニックにて栄養指導、食事記録の栄養分析、食事管理業務に従事。フランス料理の三國清三シェフととともに病院食や院内レストランのメニュー開発、料理本制作の経験をもつ。管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の立場から食事からのアンチエイジングを提唱している。「老けない人は何を食べているのか」「病気にならない人は何を食べているのか」「体にいい『食べ合わせ』」「太らない人の賢い食べ方」「老けない人の献立レシピ」など著書多数