「小1プロブレム」の恐ろしい実態…忍耐力・協調性が著しく欠如、家庭での躾の不足が原因

 自分の思い通りにならないと我慢できず、つい暴れてしまう。そんな小学生が急増している。これは、子どもたちの忍耐力の欠如がいかに深刻なものであるかを物語る現象と言える。

忍耐力・衝動コントロール力を育てるのが喫緊の課題

 忍耐力が乏しく、衝動コントロールができないのでは、この先の未来にまったく明るい展望は描けないだろう。

授業中に先生の指示に従うことができない。

学校の規律を守ることができない。

わがままで友だちとうまく遊べない。

 かつての学校なら、このような子どもは先生から厳しく注意・指導され、忍耐力を身につけ、衝動コントロール力を身につけていった。だが、今は違う。保護者がそこに気づいていないととんでもないことになりかねない。

 何が違うのか。それは、学校の先生たちが子どもたちに厳しく注意したり指導したりすることができなくなったことだ。授業中に指示に従わない子に厳しく注意すると、「ウチの子が先生からきつい言い方をされて傷ついています。もう学校に行きたくないって言ってます。どうしてくれるんですか!」などと保護者からクレームが来たりする。実際、それで不登校になる子もいる。そのため、今は学校の先生たちは子どもたちに厳しく注意したり指導したりできないのである。

 そのため、忍耐力も衝動コントロール力も乏しいままになってしまう。するとどうなるか。授業に集中できず、家で宿題や試験の準備勉強をしなければならないときもゲームやテレビを我慢できず、勉強がおろそかになる。部活でも、ちょっと厳しいことを言われると嫌になり、すぐにやめてしまう。自己中心的傾向が抜けずわがままなため、友だちとうまくいかない、あるいは友だちができない。つまり、学校生活で大きな部分を占める学業、部活、友人関係のすべてにおいて挫折する可能性が高い。

 人生で何でも思い通りになるなどということはあり得ない。何かを成し遂げるためには、我慢しなければならないこともある。力をつけるためには、厳しい注意や叱責をも糧にするしぶとさや貪欲さが求められる。相手にも自分と同じように意思があるのだから、自分の思いばかり押しつけるわけにはいかず、適度に譲歩する必要がある。社会には決まりがあり、それを守らないと受け入れてもらえない。そのような当たり前のことを叩き込まれていない子が増えているのである。

 親としては、今や子どものしつけ学校任せにできない時代なのだということをしっかりと自覚し、わが子の忍耐力や衝動コントロール力を育てることを考えるべきだろう。そうでないとわが子に明るい未来が開けてこない。

(文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士)

●榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士

1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『伸びる子どもは〇〇がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』『ビジネス心理学大全』(以上、日経BP)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『教育現場は困ってるに変更』(平凡社新書)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)など多数。