すかいらーくグループの発表した資料のなかで、ライフスタイルの変化に対応したメニュー戦略と記載されているが、記載された内容を見る限り、業績回復には程遠い印象を受けた。「外食がより特別な機会となったことによる『ご馳走感』を求める傾向の高まりに対応」「高単価帯の客数前年比が相対的に高い傾向」(資料より抜粋)と記載されている。また1000円を超える客単価が多いことが資料では示されている。コロナ禍による客単価の増加はファストフードでも同様にみられる傾向だ。
だが、この数値だけを前提として、ガストにハレの日の食事を選択する(指向する)消費者が多い、とみるのは早計ではないだろうか。なぜなら、ガストにごちそうを食べに行く客層は多いのかという根本的な理由付けが欠けているからだ。すかいらーくグループがチェーン展開するなかで、ターゲット客層による役割分担ができていないのではないか。もしかすると、ガストがすかいらーくグループの上位ブランドとして位置付けられる日が早晩やって来るのかもしれない。
ファミリーレストランはアプリの機能追加が喫緊の課題として挙げられる。消費者はホームページ等の情報により、使用するチェーンや店舗を選択する時代がすでに来ている。スマホの普及、ホームページによる情報発信、そして注文などツールは増えているが、いまだに会員登録を促しクーポンの配布を主目的にしたチェーンが多い。消費者は一方的に送られるクーポンには飽きている。必要なクーポンであれば、消費者はツールを駆使して自分から取りに行く術はこころ得ている。紙クーポンが必要な世代、人数は限られているのが昨今の状況ではないだろうか。
15日にホスピタリティーレストランのロイヤルホストを運営するロイヤルホールディングスの12月期決算報告が発表された。天丼でおなじみの「てんや」も同グループの一社といえばピンとくる人も多いだろう。テイクアウトやデリバリーの取り組みにより、ロイヤルホストは一定の業績を確保したようだが、他方でテイクアウトの競争激化により「てんや」は思ったように業績を残すことはできなかった。各社がテイクアウト戦略を強化したことにより、相対的に「てんや」の持つ価値が薄められ後塵を拝したかたちとなった。
ハレの日にも活用できるロイヤルホストの持ち帰りは、ホームページを見る限り単価も高いが品質も高いレベルにあると感じさせる。普通のランチメニューや定食をボックスに詰め込みました、という印象は受けない。ロイヤルホストの矜持が見え隠れする。ホスピタリティーレストランとしての役割と自分たちの立ち位置。良質な商品を適正な価格で、安心とともに提供する姿勢はコロナ禍であっても変わらない。
ロイヤルホストの月次売上(既存店前年同月比)によると、1月は売上高69.5%、来客数61.4%と苦戦。一方で客単価は113.2%と好調だ。昨年一年を振り返ってみても、客単価は常に100%を上回っている。特に昨年5月は133.4%と一番高い客単価となっている。先に示した通り、ファミリーレストラン全体でも客単価は落ちていないことがわかる。
家計調査と連動して考察してみると、ひとつの仮説が見いだせる。外食に対する消費支出の減少は、外食機会の回数減少によるものと想定される。なぜなら1回ごとの支出は客単価に見られる通り、落ちていない。それどころか、増加傾向にあるからだ。回数が減少することと並行して、外食がより大切な時間・機会として結果的に支出増につながっているのではないだろうか。
コロナ禍による外出自粛に伴い、しばらくは外食の機会が減少することはやむを得ない。
しかしながら産業としての外食を守る、ひいては生産者や食文化も守るという気概のもと、テイクアウト(持ち帰り)やデリバリーなどを工夫して多くの消費者に活用していただくことにより、中食という役割で家族のだんらんをつくってほしいと切に願う。持ち帰り後発組であるが、ファミリーレストランの今後の戦略を見守っていきたいと思う。
(写真・文=重盛高雄/フードアナリスト)
●重盛高雄
ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。ほかにもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。