「65歳以降に家賃・ローンがかからない住居を確保する」ためのケース別の作戦

・作戦(2)退職前後に実家(親の持ち家)に引っ越す

 親が住まいを持っていれば、そこに引っ越す手がある。親やきょうだいとの関係が良好で、高齢でも暮らしやすい場所なら現実的だろう。ラッキーだ。

 課題は2つ。古い家のメンテナンスと、きょうだいがいるときの利害調整だ。自分が退職する前に、親が亡くなることもある。誰も住まない家を、場合によっては10年以上メンテナンスし、そこに引っ越すときにはリフォームやリノベーションをする必要がある。その分の費用を見積って準備し、計画的にメンテナンスしよう。行動力が大切。

 きょうだいがいるときは、そこに住むにあたって、ゴタゴタが起きないよう工夫しておこう。親が元気なうちに家族で話し合っておきたい。親から話をしてもらえるといい。いざ相続のときには、いずれその家に住みたいという希望をきちんと伝え、相続財産や割合を調整する。住まいを相続するから現金は相続しないとか、自分が死んだときは甥や姪に相続させるとか。

 状況が複雑なときはもちろん、シンプルに思えても、相続の専門家に相談することをお勧めする。できれば事前に。相続の素人判断は危険。あとで問題が起こることが多い。

・作戦(3)退職後に家賃が格安のところに引っ越す

「住める実家がない」「家は買いたくない」「買えない」というなら、退職後に格安家賃のところに引っ越そう。都心から郊外、地方へ動くことになるかもしれない。月8万円から3万円のところに引っ越せれば、月5万円の節約。市営/都営住宅などは、収入に応じて家賃が決まるので、主な収入が年金だけで、額が少なければ家賃も安くなる。都内で月1万円の住まいに当選して、にこにこ引っ越した友人もいる。公共の住宅は抽選のところが多く、倍率も高い。退職の数年前から気長に応募し続けたい。

・番外編 親の公共住宅を引き継ぐ

 親が格安家賃の公共住宅に住んでいる人もいるだろう。その住宅に入居するための抽選の倍率はものすごく高くてなかなか当たらない。そういう住まいでも、入居者が亡くなった時に、同居していたとか、収入が一定の範囲内であるとかの条件を満たせば、入居権利を引き継げることがある。

 理想的な住まいとはいえなくても、手をかけて快適に住めるなら、この可能性を探ってみるのも一手だろう。

もともと親と同居組も早めの準備を

 いったんは親元を出て独立しても、親が高齢になって40~50代で実家に戻る人もいる。独立せずに、ずっと親と暮らしている人もいる。相続人が自分だけなら、親の住まいは自由になる。愛着がある家、土地ならそのまま住み続ければいい。住まいを売って、もっと住みやすい物件を買うこともできる。

・作戦(1)きょうだいがいるなら、早めの作戦を

 きょうだいがいるなら、相続のときに(できれば事前に)話し合いが必要だ。さほど価値が高くない物件なら、「いいよ、兄ちゃんがそのまま住んで」となるだろうが、一定の価値があると「売って代金を分けよう」「半分は私が相続するから、その分の家賃を払って」と言われることもある。

 親が元気なうちに話をしておこう。親から「兄ちゃんは独身だし、私たちの面倒を見てくれてるから、住まいは兄ちゃんに相続させるつもりだ」「半分ずつ相続させるが、兄ちゃんが生きてるうちは、家賃なしでここに住ませてやってくれ」とかいう話をしてもらえば、スムーズにいく、かもしれない。できるだけ遺言書を残してもらおう。

・作戦(2)住み続けるならメンテナンス

 親の家をもらってそのまま住み続けるなら、メンテナンスが鍵だ。50代の今から30年以上、快適に暮らせるよう、今からまめに手入れをする。親のため、自分のために、バリアフリーに改造しておこう。条件が整えば、親が元気なうちに建て替えてもいい。家賃やローンがかからない分、費用と手間をかけてメンテナンスをしっかりしておこう。