2つ目は、オンラインでの対戦はかねてからファンに待ち望まれていた要素で、今回初めて実装されました。年末年始を家で過ごすなかで友人にオンライン対戦に誘われてソフトを購入した、という声も多く聞かれたので、巣ごもり需要による後押しも大きいですね。
3つ目は、ゲームの実況動画はここ数年で一般的なものとなり、現在は芸能人がゲーム実況をするようになりました。桃鉄はほかのプレイヤーよりも先に目的の駅に着くというルールが非常にわかりやすく、カードによる逆転の要素もあり、見ているだけでも楽しいタイトルなので、実況動画が数多く投稿されています。
発売前から公式サイトにお笑い芸人の方々を起用した対戦実況動画を投稿していたので、ゲーム実況動画の影響力・宣伝力は強く意識されていたのではないでしょうか」(卯月氏)
オンライン対戦の初実装が巣ごもり需要と、ゲーム性がゲーム実況動画の隆盛と結びついた、いわば時流に乗ったがゆえのヒットともいえる桃鉄令和。今回のヒットを機に、かつてのような継続的なシリーズ展開が再開されるのだろうか。
「現在、ゲームはロングセラータイトルが増加し、長寿命化が進行しています。シリーズ展開は充分に考えられますが、以前のように毎年新作を出すとなるとマンネリ化に陥りますし、今のゲームシーンでは非現実的です。
ですから次々と新たな作品を出すよりも今作の販売本数を伸ばすために、ソフトのアップデートやコラボイベント、芸能人と対戦できるような企画を開催し、追加コンテンツを販売するというやり方のほうが現実的でしょう。実際、昨年12月24日のアップデートで『ゲストと対戦!』機能を追加し、フレンド以外のプレイヤーとも遊べるようになっています。
また、オンラインゲーム『フォートナイト』がトラヴィス・スコットさんや米津玄師さんのバーチャルライブを開催したように、ゲームをさまざまな遊びや楽しみを提供するプラットフォームと位置づけようとする動きもあります。
桃鉄令和では難しいかもしれませんが、ゆくゆくは桃鉄自体がほかのボードゲームのプラットフォームになる、旅行サイトやグルメサイト、イベント情報サイトを兼ねるといった方向に進んでいくかもしれませんね」(卯月氏)
復活の狼煙(のろし)を上げた桃鉄シリーズがどこへ向かうのか、令和のパーティゲームの“定番”となれるのか……今作を楽しみつつ、今後の動向に注目したいところだ。
(文=佐久間翔大/A4studio)