キリンは20年10月に投入した「一番搾り糖質ゼロ」が好調だ。新商品は年300万ケースの出荷でヒット商品とされるなか、430万ケースの販売を見込む。ビール類の価格改定に消費者がどういう消費行動を取るかが、今後の最大の焦点である。
ビール、発泡酒、第3のビールと、3段階に分かれている税額は26年10月に350ミリリットル当たり54円25銭に統一される。ビールは減税、第3のビールと発泡酒は増税となる。スーパードライは税金が安くなり、キリンのシェア逆転の原動力となった本麒麟が増税となり価格優位性が発揮できなくなる。26年10月を前に23年10月に前段の税額の調整がある。
キリンが、ファミリーマートやローソンから生産を請け負っている第3のビールのPB(プライベートブランド)は、年間1000万ケースを超えると見られている。税額が引き上げられれば、コンビニ各社はPB商品を見直すこともあり得る。キリンは11年ぶりに首位を奪還したが安閑としてはいられない状況なのだ。
これからの主流は缶酎ハイになる、という見方がある。キリンの21年の販売目標は缶チューハイ「本搾り」などが4.9%増の7500万ケース、「本麒麟」等の第3のビールは6080万ケースで前年比3.6%減のマイナス成長を予想している。「一番搾り」のビールは17.2%増の4220万ケースとなっている。「麒麟淡麗」の発泡酒は6.4%減の2840万ケースだ。
缶チューハイや瓶入りカクテルなど水や炭酸水で割る手間のかからないアルコール飲料をRTD(ready to drink)というが、7500万ケースというのはRTD全体の数字である。アルコール飲料の地図はビール類からビール類以外のカテゴリーに塗り変わりつつある。ビール類の価格改定は、この流れを加速させることになりそうだ。
ビール系飲料は主原料の麦芽の配合比率に応じてビール、発泡酒、第3のビールの順に税率が高い。政府は20年10月、23年10月、26年10月の3段階を経て、税率を一本化する。
第1段階が20年10月だった。350ミリリットル缶でビールの酒税は77円から70円に引き下げられた。第3のビールは28円から37.8円に上がった。発泡酒(46.99円)は据え置かれた。その後もビールの税率は下がり、第3のビールと発泡酒は上がり、最終的に26年10月に54.25円に統一される。
缶チューハイなどは20年の税額アップはない。26年10月に28円から35円に上がるが、それでもビール類と比較すると相対的に安い。缶チューハイが伸びるとの予測が成り立つのはこのためだ。
(文=編集部)