特に、女性の就業環境の悪化の背景として、主に2つの要因がある。1つ目が、女性の非正規比率が高いことである。非正社員のほうが雇用調整を行いやすいため、より雇用が減少しやすかったと考えられる。実際、コロナ前の2019年時点で非正規雇用比率を男女別に見てみると、男性は2割強に対して女性が55%以上あり、こうした要因も女性雇用が大きく減りやすい背景になっている。
そして2つ目が、いわゆる非接触化の進展で、サービス関連や卸・小売といった、女性比率が高い職場で雇用が減ったことである。実際、就業者数の男女別変化を業種別に見てみると、コロナショックの第一波が到来した昨年春にかけて宿泊・飲食サービスや生活関連サービス等で女性がかなり減っており、夏にかけては卸・小売のほうで女性の減少が目立ったことがわかる。
また、昨年夏以降は就業者数が回復傾向にある医療福祉分野でも、昨年春から夏にかけては大きく女性の就業者が減っており、コロナ禍によって人のニーズが強まっていたにもかかわらず、労働市場から女性を中心に退出をしていたことを垣間見ることができる。
したがって、緊急事態宣言延長となれば、特に女性雇用環境の悪化が深刻になることが推察される。
こうしたなか、政府もコロナ禍の女性への影響と課題への対応を進めつつある。例えば、3次補正には、DV、性暴?、?殺等対策として、新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付?の創設(厚?労働省140億円の内数)、配偶者暴?被害者等への相談・?援の強化(内閣府4.3億円)、性犯罪・性暴?被害者等への相談・?援体制の強化(内閣府3.4億円)等が盛り込まれている。
また、エッセンシャルワーカーの処遇改善として、新型コロナウイルス感染症緊急包括?援交付?(医療、介護、障害福祉、児童福祉)(厚?労働省1兆1,763億円)、診療・検査医療機関をはじめとした医療機関等への感染拡?防?等の?援(厚?労働省1,071億円)なども盛り込まれた。
さらに、ひとり親家庭への?援として、ひとり親世帯臨時特別給付?(厚?労働省737億円)が予備費から計上されており、ひとり親家庭等相談体制強化事業(厚?労働省4.0億円)、テレワーク対応として、中?企業?産性?命推進事業(特別枠)(経済産業省2,300億円)も3次補正に盛り込まれている。
一方、人材育成・就労支援として、地域?性活躍推進交付?(内閣府1.5億円)、?材開発?援助成?による他業種転換?援(厚労省10億円)、雇?と福祉の連携による離職者への介護分野への就職?援(厚?労働省)、感染症の影響による離職者を試?雇?する事業主への助成(トライアル雇?助成?)(厚?労働省)が3次補正に盛り込まれている。
しかし、いずれの政策も各自治体の対応次第で成果も変わってくることになろう。したがって、政府は予算を配分するだけではなく、各自治体の取り組み状況を厳しくチェックすることが必要になってこよう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)
●永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。内閣府経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。