経団連、トヨタ社長やパナソニック社長が“距離を置く”…副会長候補にDeNA会長の名も

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経団連会館(「Wikipedia」より)

 経団連の18人の副会長のうち5月末に2期4年の任期を了えるのは4人だ。大成建設の山内隆司会長、日本製鉄の進藤孝生会長、三菱電機の山西健一郎特別顧問、トヨタ自動車の早川茂副会長である。山西氏の後任はエレキ枠。電機業界から選ばれる。NECの遠藤信博会長(審議員会副議長)が最有力とされている。NECから副会長が出るとすれば、故・関本忠弘氏(副会長、評議員会議長を歴任)以来となる。

 パナソニックの会長に就任する津賀一宏社長(審議員会副議長)の名前が取り沙汰されているが、「御本人は乗り気ではない」(パナソニックの元役員)。「一番やりたがっている」(経団連関係者)といわれているのが東芝の車谷暢昭社長だが、車谷氏は現在、経済同友会の副代表幹事だから、同友会から経団連へ鞍替えを目指すことになる。「東芝の業績を立て直して、企業としての信用を回復するのが先決」(財界首脳)との厳しい評価が多い。本人の評価と周囲の評判に大きな落差があるように映る。いずれにしてもエレキ枠の候補は迫力不足で新鮮味に乏しい。

 早川氏の後任はトヨタから出るとみられているが、「誰が出てくるかまったくわからない」(経団連幹部)。経団連側は「トヨタから副会長を出してもらいたい」(同)と考えており、小林耕士副社長の名前が出ているが、一部に、「(任期切れになる)早川氏の続投」(トヨタ関係者)という見方まで流れている。経団連が切望する豊田章男社長の副会長就任は「今回もなさそうだ」(同)。

 山内氏は建設業界初の副会長に就いたが、建設業界に後継者はいない。副会長の人選で例年、注目されるのは多様性の象徴としての女性副会長の起用だ。山内氏の後釜に女性を起用する可能性がある。審議員会副議長に野田由美子ヴェオリア・ジャパン会長、武内紀子コングレ社長の2人がいる。「前回、中西(宏明)会長(日立製作所会長)はディー・エヌ・エーの南場智子会長の起用に前向きだった。南場さんが受ければ、それで決まり」(副会長の1人)ともいわれている。

 経団連副会長は日本製鉄の指定席。進藤氏の審議員会議長などへの横滑りがなければ、進藤氏の後任には日本製鉄の橋本英二社長が就く。

 2期目に突入した中西会長の任期は22年5月31日までだが、20年7月にリンパ腫が再発し、入院、加療している。経団連会長としての会見は、入院後初となった9月7日は出席したが、その後は病室からのオンライン方式。12月や21年1月もオンライン会見だった。

 会見に出られない時には審議員会議長の古賀信行・野村ホールディングス特別顧問が代役を務めてきたが、「代役はとても無理」(副会長経験者)。もし仮に中西氏が今年5月に退任することになれば、次期会長は中西氏の残りの任期だけを担う。その場合の最有力候補は日本製鉄の進藤氏だとみられている。

 経済三団体のトップを同じ時期に同一企業の出身者が重複しないという暗黙のルールが存在するが、緊急時の場合は問題にはならないとの見方が経済界で強まっている。過去には新日鐵が2団体のトップを同時期にやっていたこともある。永野重雄氏(日本商工会議所会頭、1969~1984年)と稲山嘉寛氏(経団連会長、1980~1986年)である。

(文=編集部)