とはいえ専有面積が限られていますから、専有部分でできることには制約があります。そのため、比較的規模の大きなマンションを中心に、共用部にコワーキングスペースを設けるケースが増えています。
三井不動産レジデンシャルなどが2020年11月から販売を開始した「パークタワー勝どきミッド/サウス」(東京中央区)は、総戸数2786戸の商住複合大規模再開発プロジェクトで、都営地下鉄大江戸線の「勝どき」駅徒歩1分という利便性の高いマンションです。
商業施設、スポーツアリーナ、保育所などを建物内に備えたミクストユースの街づくり、屋外に出ることなく駅や商業施設を利用できる利便性に加え、ニューノーマル時代の多様性に備える共用部分の充実が特徴となっています。
パークタワー勝どきミッド/サウスでは、写真にあるように、個室ブース付きの300平方メートルのコワーキングスペースが用意されます。また、簡単に外出できないため、ついつい体がなまりがちになるため、それを解消するオンラインフィットネスが可能なパーソナルスタジオも設置されます。
マンション居住者のなかには、テレワークするにしても、自宅内での仕事では、オン/オフの切替えができない、仕事に集中できないといった不満を抱いている人が少なくありません。かといって出勤するには、通勤電車やオフィスでの密が不安という思いもあります。
そうした人たちにとっては、建物内にある、自宅外のこの共用部分のコワーキングスペースはたいへんありがたい存在ではないでしょうか。300平方メートルものコワーキングスペースを設置できるのは、総戸数2000戸を超えるメガマンションならではですが、最近はそこまで大規模ではなく、小中規模のマンションでも、共用施設にライブリーやコワーキングスペースを設けるケースが増えています。
リモートワークに集中するだけではなく、居住者間の交流スペースとしても活用でき、今後も設置が進むことになるではないでしょうか。
先のリクルート住まいカンパニーの調査にもあったように、マンションでは非接触、抗菌なども重要なテーマになっています。そこで、大和ハウス工業では、抗ウイルス・抗菌加工を施した建材を採用するとともに、非接触キーや人感センサー付きスイッチなどの感染リスクを低減できるアイテムを導入した「抗ウイルス・抗菌マンション」を順次、全国展開する方針を打ち出しています。
第一弾となるのは、「プレミスト茨木双葉町」(大阪府茨木市)で、2021年4月からの販売を予定しています。図表にあるような、凸版印刷が開発した特殊フィルムを施した床材や建具を採用しています。凸版印刷によると、特定ウイルスが24時間で99.9%減少することが研究機関の調査で実証されており、抗菌の効果は大腸菌、ブドウ球菌がやはり24時間で99.9%減少するとされています。
また、総戸数74戸の中規模クラスのマンションですが、共用部にはテレワークや子どもの宿題・勉強スペースとして利用できるように個室ブースが6か所設けられています。
サーパスマンションを全国で展開する穴吹工務店では、顔認証セキュリティを標準採用したマンションの展開を進めています。マンションのエントランスでは、顔認証でドアが開き、顔認証でエレベーターのセキュリティを解除、押しボタンでエレベーター内に入れば、自動で自宅階のボタンが押されます。歩きながらの認証が可能なので、小さな子どもと手をつないだまま、また大きな荷物を持ったままでもマンション内に入ることができます。
さらに事前に登録しておけば、マンションの宅配ボックスも顔認証で、開錠することができます。鍵やカードの紛失の心配がなく、大切な荷物を安心して受け取ることができます。
以上のように、さまざまなレベルでのニューノーマル対応が進んでいるマンション。これからの住まい選びの重要ポイントのひとつになりそうです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)