外食大手、営業時短要請に“応じない”動き広まる…「雇用守れない」「外食産業崩壊」

 武長太郎社長は1月12日、自社のウェブサイトに「営業を行わない限り300名以上の社員と、800名を超えるアルバイトメンバーの雇用を守ることはもちろん、パートナー企業や、飲食店経営に携わるサプライヤーを守ることができません。これらの雇用を守ることも、我々の使命だと考えています」と書き込んだ。

 時短要請に応じた場合に支給される協力金の不備が原因で国や都の要請に叛旗を翻したということのようだ。都は支給対象を中小企業(資本金5000万円以下または従業員50人以下)や個人事業主に限定しており、大手は対象外だ。神奈川、埼玉、千葉の各県は大手企業も協力金の対象なのに東京都はそうではない。都の措置に武長社長は「不公平感を覚えました」と不満を表明した。東京都は「東京は他県に比べてチェーンの数が多いため、財源の観点から、大手を対象外とした」と説明している。

 都内を中心に「カフェ ラ・ボエム」など和食・洋食のダイニングレストランを運営するグローバルダイニング(東証2部上場)は首都圏の1都3県にある30店で時短要請に応じていない。長谷川耕造社長は自社サイトに「今の行政からの協力金やサポートでは時短要請に応じられません」と言い切り、通常通り深夜までの営業を継続すると宣言した。

 東京都の小池百合子知事は1月18日、大手企業も協力金の対象とするよう検討を始めたことを明らかにした。数日中に結論を出すとしている。大手飲食チェーンは昨年4月の緊急事態宣言の際にはそろって時短要請に応じた。しかし、今回、叛旗を翻すところが多数出たのは、それだけ経営が厳しくなっているということだ。

 ワタミの渡邉会長は「銀行次第だと考える」と言い、外食企業は存亡の危機に立たされており、銀行の腹ひとつでジ・エンドになるかどうかが決まるというシビアな見方をしている。2021年は大手外食の倒産が続出するかもしれない。

(文=編集部)