また、図表2のとおり、日本の国債市場も構造的な変化が起こっている。まず、これまで海外投資家の国債保有割合(ストック)は2004年で約4%であったが、2019年では約13%に上昇してきている。加えて、国債流通市場における売買シェア(現物)についても2004年12月で約14%であったが、2019年12月では約39%に上昇してきている。特に、売買シェア(現物)は日銀が異次元緩和を開始した2013年以降から急上昇している。
海外投資家の拡充は国債の引き受け先に関する多様化を図るためには望ましいが、ギリシャの財政危機でも明らかなとおり、海外投資家は危機時に躊躇なく国債を売却するため、海外投資家の割合が増すと国債市場が不安定化する懸念がある。国債市場の安定化を図るためには、できる限り国債の国内消化に努めるとともに、日本財政に対する信認を向上させる必要があることを意味する。
緊急事態宣言は再び発令された今、まずは感染症対策の強化と経済の再生が優先であることは言うまでもないが、コロナ禍にあっても財政再建の目標を堅持し、中長期的な財政規律を示す必要があろう。
(文=小黒一正/法政大学教授)