伊藤忠、総合商社業界トップへ…「非資源重視」だけでは説明できない“岡藤流”経営の神髄

ファミマを完全子会社にし一体経営

 岡藤氏の経営手法の特徴の2つ目は一体経営だ。コンビニエンスストア、ファミリーマートがその典型例といえる。5800億円を投じ、TOBを実施して完全子会社にした。ファミリーマートは20年11月12日、上場廃止となった。

 伊藤忠はこれまで「餅は餅屋」(岡藤氏)として、ファミマの自主性に任せてきた。ところが三菱商事がローソンの子会社化に乗りだしたことから伊藤忠も動いた。「お互いが譲らない真剣勝負だった」(ファミマ首脳)というほど、緊迫した関係が続いた。完全子会社化をめぐり伊藤忠とファミマのせめぎあいは半年間続いたという。新型コロナが直撃し業績が急激に悪化したファミマの抵抗もここまで。TOBによる完全子会社化を受け入れた。

 ファミマはアジア事業で苦戦してきた。14年、韓国から撤退し、海外で最大の店舗網を失った。東南アジアでもっともコンビニが普及するタイでも合弁会社の出資を引き揚げた。中国では合弁相手の台湾系食品大手、頂新グループとの訴訟が続き、現地では撤退すらささやかれている。

 ファミマを完全子会社にした伊藤忠がまずテコ入れをするのは中国事業だ。株式市場が注目しているのは、15年、約6000億円を投じた中国中信集団(CITIC)の存在だ。「CITICの力を借りて、現在の合弁とは異なる形で中国市場に再参入するのではないか」との見方が消えてはまた浮かぶ。

 コンビニ各社は成熟した国内市場では成長戦略を描きにくくなっており、海外市場の開拓は欠かせない。海外でどれだけ利益を挙げられるかの勝負になってきた。ファミマを完全子会社にした伊藤忠は、ファミマの海外事業で大きな花を咲かせることができるのだろうか。

 総合商社は伊藤忠の時代が来るといわれている。ファミマの再生が岡藤流経営の次の到達点。頂(いただき)は、まだその先にある。

(文=編集部)