「今年は多くの芸人さんがYouTubeデビューを果たしましたが、カジサック(梶原雄太)さんや宮迫博之さんを例に挙げるまでもなく、もともと厳しいテレビの世界で結果を残してきた人たちなので、素人に毛が生えたようなYouTuberとはトークのスキルがまったく違います。もちろん、目の引き方や見せ方など、動画コンテンツとの相性もあるので、動画配信にハマる人とハマらない人の格差はこれから先、広がっていくと思いますが、うまい具合にマッチングした芸人さんは今後さらにハネる可能性は大いにあるでしょうね」(放送作家)
では、なぜ、お笑い芸人がここまでゲームにドハマりしたのか? 芸人にとって、特に小籔のように生の舞台に立って客の視線に晒されるタイプの場合、相手の芝居やアドリブに合わせて臨機応変に対応し、的確なリアクションで笑いにつなげるという、とてつもない反射神経が求められる。
単純に比較はできないが、相手の出方を先読みした立ち回りが常に必要とされ、一瞬の判断や操作ミスが命取りになるこのオンラインゲームに、芸人として同じ“匂い”を感じたのかもしれない。
もちろん、彼らには本業があり、来年以降このテンションが継続しているかどうかは現時点ではわからない。しかし、先の見えないコロナ禍が続くなか、どんな状況にも対応して“笑い”を生み出すその姿に新しい時代の可能性を見るとともに、「ただでは転ばないぞ」という、生きるたくましさを強く感じるのである。
(文=中村裕一)
●中村裕一(なかむら・ゆういち)
ライター。テレビ・ドラマウォッチャー。主にエンタメ方面で活動。<twitter:@Yuichitter>