令和2年は「コロナに始まりコロナで終わる」と思われますが、年末年始を迎えて雇用や賃金などの環境がかなり厳しくなると予想されます。いや、年末年始を乗り越えても年度末には再度厳しい状況になるかもしれません。このため年末年始を迎えるにあたり家計は「現金・預金」を厚めに保有しておくべきでしょう。備えあれば憂いなしです。
家計(個人)は依然として残業時間がコロナ前に戻っておらず、また今冬のボーナス支給額は日本経済新聞調べ(12月1日時点)で、対前年比8.55%の減少となっています。さらに早期希望退職者を募集している上場企業の数は72社と、2019年通年の35社の2倍超になっています。この数値は東京商工リサーチが10月30日にリポートで公表したものですが、その後も早期退職募集を公表する企業が増加しています。
一時的な状況であればよいのですが、企業業績の回復度合いから推測すれば、年末年始を無難に越しても年度末に向かって雇用状況はさらに厳しくなることも絵空事ではないはずです。来期の賃上げも、定期昇給だけでベアのない企業がかなりの数に上る可能性も否定できないでしょう。
欧米ではワクチンの接種が始まりましたが、それが広がるにはかなりの時間がかかるはずで、景気回復や業績好転で個人の収入が増えるまでには相当の時間がかかるといわざるを得ません。リーマンショック後、民間企業の平均給与がショック前に戻るには9年もかかりました。
リスクを挙げればキリがないのかもしれませんが、収入のリカバリーに数年の時間がかかるとすれば、私たちが行うことはただひとつ。手元の現金や預金を増やすことに尽きるでしょう。動物が冬眠するのと同じく、さらに厳しくなる前に現金・預金を増やして厚めに保有するくらいの慎重さが必要になるのです。何が起きても現金・預金で対応できるようにして生き残ることを最優先に考えるべきでしょう。余談ですが、筆者も住宅ローンの繰り上げ返済をせっせと行い、家計の財務内容改善に努めています。
各種給付金によるモルヒネ効果もそろそろ年末で切れることから、年明けには倒産・廃業が増えると予想されます。年末年始を乗り切ったとしても、冬場にインフルエンザの流行あるいはコロナの感染者の大幅増加があれば、緊急事態宣言が出されなくとも人々の行動が減り、かつ景気も再び落ち込むことが予想され、年度末に向けて厳しい状況が企業、ひいては家計を襲う可能性があるのです。
政府は第3次補正予算を考えているようですが、財政悪化を懸念する専門家の声が大きいことから、国民一律10万円のような特別定額給付金、中小企業などへの持続化給付金のような大盤振る舞いは期待できそうにありません。さらに第3次補正予算の審議は年明けからということですが、対応が遅すぎるといわざるを得ません。家計も企業も守るのは常に自分自身、政府はときどき止血や輸血、あるいは点滴を打って延命はしてくれるだけと認識すべきです。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)