エイベックス、新社屋売却、経営危機の深刻度合い…松浦会長の年報酬2億円超、赤字拡大

 音楽事業に含まれていたEコマースやファンクラブ、チケットサービスはデジタル事業に統合された。デジタル・プラットフォーム事業の21年上半期の売上高は118億円。前年同期の171億円から31%減った。

創業者の松浦勝人会長がCEOを退任

 浜崎あゆみ、倖田來未、小室哲哉など有名アーティストが所属して一世を風靡した。しかし、いまや所属アーティストに往時の勢いはなく、ドル箱だった音楽CDのパッケージ商品も売れなくなっている。こうした構造的な弱点にコロナが追い打ちをかけた。

 6月26日に開催した定時株主総会で松浦勝人会長がCEO(最高経営責任者)職を返上、黒岩克巳社長がCEOに就いた。松浦氏はエイベックスの創業者。18年まで社長CEOを務めた。それ以降もCEOとしてグループを統括してきた。松浦氏はツイッターで「CEOの職を降り、念願であったクリエイティブに専念する」と表明した。コロナ禍で創業以来、最大の危機に直面している最中にトップの座を降りたわけだ。

 初の希望退職者の募集、本社ビルの売却、創業者のCEO退任。エイベックスは未曽有の危機を、どう乗り越えようとしているのか。松浦会長は20年3月期に2億7500万円の役員報酬を受け取っている。同社社員の平均年収は700万円だ。

シンガポールの“物言う株主”が6%弱を保有

 12月に入り、シンガポールのファンド、3D・インベストメント・パートナーズがエイベックス株を5.59%取得していることが明らかになった。「3Dは株主提案などを通じて経営陣に改革を要求するファンド」(兜町筋)とみられている。7月には東芝の株主総会で社外取締役2人の選任を求める株主提案を行ったが、この時は否決されている。

 3Dがエイベックスに対して収益改善に向けた具体策を要求する可能性もあり、新しい波乱要因になるかもしれない。

(文=編集部)