日清食品ホールディングス(HD)は持ち分法適用会社だったスナック菓子大手、湖池屋を子会社にした。湖池屋の創業家の小池孝会長らから湖池屋株式を10.6%追加取得した結果、出資比率は34.5%から45.1%にアップした。取得額は22億円。
日清食品HDは2011年5月、湖池屋と資本業務提携し、湖池屋株を5%取得した。12年8月、出資比率を20%に引き上げ、湖池屋を持ち分法適用会社にした。香港で合弁会社を立ち上げるなど海外でも協業している。日清食品という有力なバックを得た湖池屋は、カルビーとのスナック戦争に突き進むことになる。
湖池屋の2021年6月期の連結決算は売上高が前期比2.0%増の385億円と過去最高を見込む。営業利益は3.7%増の10億円、純利益は0.9%増の6億円となりそうだ。
新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要で、ポテトチップスを中心にスナック菓子の販売が伸びた。高級ポテトチップス「湖池屋プライドポテト」や厚切りの「じゃがいも心地」など利益率の高い商品が好調だ。
25億円を投じ、新製品を製造する関東第三工場(埼玉県加須市)を21年1月に稼働させる。21年3月下旬に発売するのはハッシュドポテトの「コクうま塩」と「クリスピーベーコン」。クリスピーベーコンは細切りのジャガイモを一口サイズのキューブ型にし、中にベーコンを混ぜ込む。
4月上旬にはポテトと料理をコラボさせた「デミグラスハンバーグ」と「タルタルフィッシュ」を売り出す。料理のような本格的な味わいのソースをポテト生地で包んだ菓子になるという。料理のような味覚とスナックの手軽さを兼ね備えた菓子をつくるという新しい試みである。コロナで食生活が変化し、間食の比重が大きくなっているともいわれる。間食需要に対応した新製品を投入し、ヒット商品に育てる戦略だ。
このほか、21年7月、九州阿蘇工場(熊本県益城町)を稼働させる。これまで九州には京都工場(京都府南丹市)から商品を運んでいた。
コロナ禍以前のスナック市場は商品のコモディティ化(同質化)や低価格化が進み低迷していた。湖池屋は元祖ポテトチップス・メーカーのプライドをかけ、「湖池屋が今つくれる一番美味しいポテトチップスをつくろう」という意気込みで、付加価値の高い商品づくりに取り組んできた。この思いが「湖池屋プライドポテト」「じゃがいも心地」のヒットにつながった。
カルビーと湖池屋は、国内スナック市場でシェア60%を占める2強だ。「プロ経営者」としてカルビーの収益力を飛躍的に高めた松本晃・会長兼最高経営責任者(CEO)が退任して2年あまり。カルビーはさらなる成長を求めて米国のスナック市場を攻める。
米国に投入する商品はポテト系スナックの「じゃがりこ」。「じゃがりこ」は、国内ではカルビーの代名詞といわれる「かっぱえびせん」の4倍近く売り上げるヒット商品に育った。カルビーの2021年3月期の連結決算の売上高は前期比3.5%増の2650億円の見込み。従来予想の2700億円から、若干引き下げた。営業利益は4.2%減の265億円(従来予想は245億円)、純利益は7.6%減の162億円(同157億円)と、それぞれ小幅だが増額した。インバウンド需要の減少で利益率の高いスナック菓子は苦戦したが、海外合弁会社の利益の伸びが寄与した。
カルビーと日清食品の子会社となった湖池屋のスナック菓子戦争は一段と激しくなる。
日清食品HDの時価総額が今年の夏に節目の1兆円を上回り、明治HD、キッコーマンと肩を並べ「1兆円クラブ」入りを果たした。6月29日の終値を基準にした時価総額は1兆41億円。初めて1兆円の大台に乗った。「時価総額1兆円」は2016年に掲げた目標である。
日清食品は株式市場では景気に左右されないディフェンシブ銘柄と位置付けられてきたが、巣ごもり消費が大きく伸びたことから成長銘柄と見られるようになった。湖池屋を子会社に組み込んだことで「1兆円クラブ」が定位置になるかが注目される。
(文=編集部)