エレクトロニクス事業は営業利益を70億円引き上げて670億円に。金融も130億円上積みして1550億円に上方修正した。
唯一、減収・減益に下方修正したのが半導体事業だ。売上高は9600億円と400億円減額した。営業利益は1300億円から490億円引き下げて810億円に下方修正した。世界シェアの5割を握る画像センサーが振るわない。9月に米商務省が米国技術を使って製造する半導体を中国のファーウェイに供給することを禁止し、同社へのセンサー出荷を停止したためだ。
平井一夫前CEO率いるソニーはテレビ事業からの撤退に踏み切れず、パナソニックより一周遅れと揶揄された。その後、ソニーはテレビ事業で大リストラを断行し、スマートフォン向け画像センサーと家庭用ゲーム機に集中的に投資した。18年3月期に20年ぶりに営業最高益を更新し、コロナ禍にもかかわらず足元の業績も堅調だ。株式時価総額(11月25日時点)はソニー12.2兆円、パナソニック2.7兆円と4.5倍もの大差がついた。ソニーはゲームに特化した戦略が効を奏した。
国産第1号のテープレコーダーの開発に象徴されるように、ソニーの創業事業は電機だ。栄光をもたらしたエレクトロニクス部門の再生は長年の課題となってきた。
11月17日、エレクトロニクス事業を手がける中間持ち株会社のソニーエレクトロニクスと、同社傘下のデジタルカメラ、テレビ・オーディオ、スマホの3子会社を統合すると発表した。ソニー本体が2021年4月、ソニーグループに社名を変更するのに合わせ、この統合会社がソニーとなる。統合会社の社長兼最高経営責任者(CEO)にはスマホ子会社の槙公雄副社長が就く。
「次世代のソニー株式会社を率いてもらうのに最適な人物だ」。ソニーの吉田憲一郎会長兼社長兼CEOは槙氏のエレキ事業会社トップの就任に合わせて、社内にこうメッセージを発した。創業事業のエレキ事業がソニーの商号を引き継ぐ。
ゲームを中核とするエンタメ会社に進化したソニーは、21年4月、ソニーグループに移行し、第2の創業に挑む。創業事業であるエレキに第2の創業を託す。「日本発で世界初のものを創ってこそ人より先に進むことができる」。これが、創業者の井深大氏のソニースピリットである。
創業以来、10年周期で消費者を熱狂させる斬新な商品を送り出してきた。しかし、2000年のプレイステーション(PS)2以降、世界的規模の大ヒット商品は生まれていない。第2の創業にあたり、エレキ事業で“ソニーにしかできない商品”を生み出すことができるかが問われている。
(文=編集部)