Nintendo Switchに、久々に「マリオカート」がやって来る、しかもゲーム業界初の新機軸を引っ提げて!
今回の特徴は「AR」。すなわち「拡張現実」の要素を取り込んだ意欲作であること。なんとゲームパッケージにはラジコンカーが1台同梱されており。これをSwitch本体で実際に操作するのがポイントだ。ラジコンカーには運転席上部の位置に小型カメラが内蔵されており、Switchの画面にその映像信号がWi-Fiを通じで送られてくる。プレイヤーは、あたかも自分がラジコンカーに乗り込んだような感覚で運転できるのだ。
画面には運転席に座るCGのマリオがオーバーラップして表示され、自分の運転に合わせてピョコピョコ動く姿が見られるのも面白い。車をバックさせると、ちゃんとマリオが振り返るのも芸コマ。ただラジコンを走らせているだけでも楽しくなってくる。
ただここだけを見ると、市販のラジコンでも同じようなコンセプトのものはたくさんあるのでは? と思う人もいるかもしれない。『マリオカート ライブ ホームサーキット』の真骨頂は、ここからさらにゲームとラジコンのカメラ映像を同期させ、1台のラジコンでコンピュータとレースを楽しめる点にある。もちろん2台以上用意すれば、対戦も可能。ラジコンのカラーリングが違う「マリオセット」「ルイージセット」の2種類が用意されており、最大4人でのプレイが楽しめる。
そして本作最大の目玉が、自宅の部屋にコースをエディットできる機能だろう。テーブルや椅子の下、ドアの近くなどに付属の「ゲート」を設置して通過ポイントを設定。これだけで、AR機能を使いサーキットが簡単に作れてしまうのだ。
まさに、未来を感じずにはいられない! 『マリオカート ライブ ホームサーキット』は、素晴らしいアイデアと技術が注ぎ込まれた任天堂らしい作品なのだ。
Wii Uからの移植だった『マリオカート8』以来の、シリーズ初Nintendo Switchタイトルということもあり、初週には販売ランキングでは7万本以上を売り上げ首位に立った『マリオカート ライブ ホームサーキット』。しかし、2週目からは売り上げが急減。発売から1カ月が経とうとしているが、販売本数は10万本に届かない状況だ。
残念なことに、その大きな原因は『マリオカート ライブ ホームサーキット』の斬新なアイデアそのもの。逆にマイナスに作用しているのだ。
まず実際にラジコンを走らせるには、日本の住宅は狭すぎた。公式HPにも「6帖以上(およそ3.5m×3mの段差のないスペースが必要」とあるが、子供部屋はもちろん、十分な広さのある居間やリビングを持つご家庭がどれほどあるのか。
「屋外で遊べばスペース確保は簡単では?」と思う人も多いかもしれないが、実はこれもかなりハードルが高い。ラジコンカーとNintendo SwitchはWi-Fiの通信でリンクしているので、通信速度が下がると画面がコマ送りになり、まともにプレイできないのだ。別途、ポケットWi-Fiなどを用意する必要が出てきてしまう。
またゲーム自体も、粗削りな部分が少なくない。まず付属するゲートが4つしかないので、かなり単純な円形コースしか作成できない。2セット購入しても、ゲートを8つに増やせるような仕様になっていないのだ。
そしてコース上にある家具などの障害物も、Nintendo Switchに認識できないようで、CGのライバルカーたちはどんどんこれをすり抜けて、ショートカットして走り去ってしまう。狭い場所でプレイすると、とにかくストレスがたまる。日本の住宅には荷が重いゲームなのだ。
せめてラジコンがもっと小型で、プラレールで遊べるぐらいのスペースでもプレイできればよかったのに……。そう思わずにいられないのだが、実際に本作の人気は海外のほうが高く、国内とは違い順調に売り上げを伸ばしている。YouTubeでも、広いリビングにコースを作り楽しんでいる様子を数多く見ることができる。
しかし、この技術を『マリオカート ライブ ホームサーキット』一発で終わりにしてしまうのはもったいない。先の小型化以外にも、ゲート数増加やコースの8の字や立体交差への対応など改良を加えれば、もっと化ける要素があるのではないだろうか? 個人的には、ドローンを使って浮遊感のある『F-ZERO』シリーズで新作を作ってほしいのだが……。
(文=後藤将之/ライター)