なぜあの企業は、新型コロナ禍でも「特需」に沸いているのか?儲ける企業の共通点

 曙ブレーキ工業も今年3月には人員削減を実施している。同社はコロナが深刻化する前から経営悪化が表面化して事業再生ADRまで申請しているので、コロナが原因ではないが、人員削減実施をこのタイミングで実施した。今年3月に希望退職者募集200人を募集、応募は154人だったが、別途自己都合退職者が32人いたため、結果的に人員削減はほぼ想定通りとなった。

 同社は19年1月に事業再生ADRを申請、同年9月にその再生計画が成立しており、金融機関から有利子負債の5割に相当する総額560億円の債権放棄について同意を得ているほか、国内外の複数の工場閉鎖・縮小を決めている。

5G関連投資が牽引して半導体製造装置は好調

 半面、5G投資に牽引されて業績が伸びている会社もある。なかでも半導体製造装置関連メーカーにおいては特需ともいえる状況のところもある。

 半導体製造装置大手の東京エレクトロンは、前期の20年3月期は2ケタ減収減益だったが、コロナ感染拡大が深刻化した21年3月期は逆に2ケタ増収増益を予想する。期初にはコロナの影響が不透明として予想を「未定」としていたが、5G関連投資の拡大などを受けて、今年7月の段階で9月中間(4~9月)については、前年同期比で売上高は21.9%増、経常利益は19.0%増、当期利益は20.7%増といずれも2割前後の高い伸びを達成するという予想を示した。コロナ下で逆に大きく伸びるという見通し。今のところ下期はやや伸びが緩むとみているが、それでも通期では順に13.5%増、12.3%増、10.7%増の2ケタ増収増益を予想している。

 エッチング装置など半導体製造装置関連を手がけるサムコも同様である。20年7月期売上高が対前期比18.9%増の58億6,900万円となり、経常利益は倍増の9億2,700万円、当期利益は3倍増の6億3,400万円となった。新型コロナウイルスの影響で新規の受注案件が一時的に停止するなど誤算があったにもかかわらず、CVD装置が2.2倍増で9億6,300万円の売上となるなど大きく伸びたほか、高周波デバイス、パワーデバイス、MEMS、各種センサ向け製造装置などが伸びている。

 コロナはさまざまな業界で勝ち組と負け組を生んだが、電機・エレクトロニクス業界においても明暗が分かれる結果となっている。

(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)