自衛隊はさまざまな任務を遂行している。国家が崩壊してしまったソマリアから出没する海賊から、ホルムズ海峡を航行する船舶を護衛する任務を、海上自衛隊は2009年から行っている。筆者は第1次の派遣で指揮を執った五島浩司氏(当時・海上自衛隊1等海佐)にインタビューした。航行中は非番でも禁酒。自衛隊拠点のジブチにはろくな娯楽もなく、結局は艦艇で過ごすしかないという悪条件。それ以上に最も厳しいのは、日本の法律が守ってくれないということだ。海賊と戦闘になって射殺したら、罪に問われる可能性がある。
日本のホルムズ海峡依存度は原油で9割近く、天然ガスで2割。海上自衛隊の厳しい任務遂行があって、日本では平和で豊かな生活を享受できる。こうした簡単なことを理解できないとしたら、日本学術会議は、専門的な知識だけあって一般常識に欠ける「学者バカ」の集まりということになる。そういう意味では、任命されなかった6名はむしろ名誉と思うべきではないか。
実際に起きた問題について、北海道大学名誉教授の奈良林直氏が、「国家基本問題研究所」のサイトに10月5日、文章を発表している。そこにはこう書かれている。
「北大は2016年度、防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募し、微細な泡で船底を覆い船の航行の抵抗を減らすM教授(流体力学)の研究が採択された。この研究は自衛隊の艦艇のみならず、民間のタンカーや船舶の燃費が10%低減される画期的なものである。このような優れた研究を学術会議が『軍事研究』と決めつけ、2017年3月24日付の『軍事的安全保障研究に関する声明』で批判した。学術会議幹部は北大総長室に押しかけ、ついに2018年に研究を辞退させた」
日本学術会議は、自衛隊に関する研究を実際に妨害したのだ。これこそ、学問の自由の侵害ではないか。北大の研究は、民間の船舶にも転用できる内容だった。今一度、日本学術会議の「軍事的安全保障研究に関する声明」を見ると、こう書かれている。
「研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうるため、まずは研究の入り口で研究資金の出所等に関する慎重な判断が求められる」
改めて言うまでもなく、ここでいう軍事目的というのは自衛隊に関することである。北大の研究は攻撃的なものではなかったが、日本学術会議は軍事研究と見なした。船舶、飛行機、ロケット、車輌、AI(人工知能)など、自衛隊が取り入れうる技術は無数にある。自衛隊員は外国語の学習を行い、体力の研鑽によってオリンピックにも選手を送り出している。音楽隊もある。
日本学術会議の理屈を当てはめれば、これは外国語学習、体力研鑽、音楽の軍事転用ということになるのではないか。「学者バカ」の手にかかれば、自衛隊の給養員が料理の腕を磨くのも、調理技術の軍事転用ということになるかもしれない。
2011年4月、日本学術会議経済学委員会は「東日本大震災への第三次緊急提言」を発した。これによって復興財源のために復興増税が行われた。これに怒りを露わにするのが、嘉悦大学教授の高橋洋一氏である。
「災害時に増税するなんて、古今東西見られない悪政です。私が主張したのは、日銀による国債引き受け。日本銀行が国債を引き受けて、お金を刷って対応するという施策です。これなら国債を発行して、国の借金を増やすことにもならない。震災などがあると、世界中どこでもやっていることです。私の主張に対して、日本学術会議は日銀引き受けはダメだなんて、バカなことを言った。私の批判に対して、日本学術会議からの反論はないから、学問の世界では私の勝ちのはずですが、現実には旧民主党政権で復興増税になりました」
国民は自分たちの税金がムダなことに垂れ流されていることに慣れてしまっているが、「学者バカ」の集まりである日本学術会議は即刻、廃止すべきだ。
(文=深笛義也/ライター、取材協力=高橋洋一/嘉悦大学教授)