東京都と他の3県では異なる動きを示した。都内の発売戸数(全体の45.4%)は前年比43%減だったが、千葉は296.2%増(3.96倍)、埼玉が179.4%増(2.79倍)、神奈川が41.7%増と大幅に増えた。東京も詳細に見ると23区が51%減と大きく落ち込んだのに対して、23区以外は30.2%増だった。
コロナ前の1月と比較すると、よりはっきりする。1月は東京23区が21.1%増、23区以外でも4.3%増だった。これに対して埼玉は89.9%減、千葉が58.8%減、神奈川が40.2%減。コロナ前は「郊外から都心へ」の流れが鮮明だった。
コロナ後に、これが一変する。消費者の郊外志向を顕著に映し出し、3県の発売戸数が急増した。
戸建て住宅は一足早く回復基調が明らかになった。東日本不動産流通機構(東京・千代田区)がまとめた8月の首都圏の新築戸建ての成約件数は573件で前年同月を35.8%上回った。コロナ禍の4月、5月はマイナスだったが、6月は15.3%増、7月は23.9%増と急激に戻り、3カ月連続のプラスとなった。神奈川が46.9%増と最も高く、東京が37.3%増。千葉25.9%増、埼玉22.5%増と、いずれも大幅に増えた。
在宅勤務の長期化は意外な分野に好影響を及ぼしている。中古の戸建て住宅が売れ始めたのだ。中古戸建て住宅の8月の首都圏の成約件数は1175件と21.8%増の大幅増。8月としては1990年5月の機構発足以降、過去最高となった。成約件数はすべての地域で前年比で増加した。
注文住宅最大手の積水ハウスはマンションは33%減と大きく落ち込んだものの、戸建て住宅は16%増、分譲住宅は73%増と急増した。木材の在来工法大手の住友林業の注文住宅は26%増。木質プレハブ大手のミサワホームも15%増だ。
新型コロナは住まいに対する人々の価値観を多様化させた。ポストコロナの住宅市場は、都心の「駅近マンション」から郊外の「戸建て住宅」への流れが定着するのだろうか。
(文=編集部)