【大手・ネット証券の2020年4~6月期業績】
社名 純営業収益 最終損益
1.野村HD 4607億円(38.8%) 1425億円(2.6倍)
2.SBIHD 1111億円(20.6%) 162億円(39.4%)
3.大和証券G 1054億円(▲1.6%) 175億円(9.2%)
4.みずほ証券 804億円(26.9%) 144億円(9.8倍)
5.SMBC日興証券 694億円(▲1.8%) 64億円(27.1%)
6.三菱UFJ証券HD 645億円(▲3.3%) 43億円(5.8倍)
(HDはホールディングス、Gはグループ本社の略。カッコ内は前年同期比増減率、▲は減、野村は米国会計基準、SBIは国際会計基準。営業収益から金融費用を控除したものが純営業収益。証券会社の決算の比較では純営業収益が使われている)
SBIHDは純営業収益で2位に大躍進した。新型コロナウイルスの感染拡大による在宅勤務の増加で、ネット証券を通じて取引に参加する個人投資家が増加。業容の拡大につながった。大手は米欧を中心とした中銀の金融緩和で、債券の価格変動を捉えたトレーディングの利益が膨らんだ。野村HDは市場部門が好調で営業収益を押し上げた。
新型コロナウイルス対策で対面営業を制限した社は個人向けで苦戦した。対面営業が主力の大手と、ネットのSBIはコロナで明暗が分かれた。
SBI証券傘下で対面営業店舗を全国展開するSBIマネープラザに、三井住友グループのSMBC日興証券が33.4%出資することで合意した。20年内をメドに出資を完了する。SBIHDは4月、三井住友フィナンシャルグループ(FG)と包括提携。三井住友FGがSBI系のスマホ証券への出資を発表するなどデジタル戦略で連携しているが対面営業でも連携を強化する。
SBIマネープラザは地銀と共同店舗を展開してきた。清水銀行、筑邦銀行など地銀12行と共同で15店を運営しており、10月には仙台銀行と共同で宮城県石巻市に新規出店する。SMBC日興証券は資産運用のコンサルティング経験のある営業社員を共同店舗に派遣し、地銀の証券業務をサポートする。
地銀をめぐっては大手証券の“陣取り合戦”が起きている。都市部の営業が中心の大手証券は地銀との連携を通じて、これまでアクセスしにくかった地方の富裕層の開拓を狙っている。
SBIHDは「第4のメガバンク」を目指す地銀の連合構想を掲げ、資本提携を拡大した。すでに島根銀行、福島銀行、筑邦銀行(福岡)、清水銀行(静岡)に出資しており、10銀行まで提携を広げる。持ち株会社SBI地銀ホールディングスが地銀に出資する。
SBIの動きを指をくわえて見ているわけではない。野村證券は19年8月、山陰合同銀行と証券事業の統合で合意。20年1月には阿波銀行と業務提携した。準大手の東海東京フィナンシャル・ホールディングスは横浜銀行など有力地銀と共同出資で証券会社を立ち上げた。
地銀にとって資産運用を中心とする証券業務は、成長が期待できる数少ない分野だ。だが、業務に精通した対面営業ができる人材の不足で苦戦してきた。地銀は大手証券との連携に活路を見出そうとしている。
SBIHDは証券・銀行の両方の再編の中心に躍り出てきた。SBIHDは「第4のメガバンク」を実現させ、デジタル証券の覇者になる野望を達成できるのだろうか。
(文=編集部)