三鷹市が取り組むデリバリー事業に続くのが、東京都日野市のキッチンカーなどの無料貸し出し事業だ。日野市企画経営課の担当者は言う。
「予算の関係上、市議会の議決を経る必要があるために事業の開始は11月からを予定しています。車内で調理が可能な、いわゆるキッチンカーだけではなく、パンや弁当、ドリンク・菓子類などを販売する移動販売車なども含めて、無料で貸し出しする事業です」
ランチタイムに駅前や人が多く集まる公園・オフィスビル前といったスペースにキッチンカーが並ぶ光景は、いまや当たり前になりつつある。昼にキッチンカーで稼ぎ、夜は実店舗で稼ぐ。日野市の無料貸し出し事業は、この二毛作を推進させることが目的で、少しでもコロナによる売上不振をカバーしてもらおうというもの。飲食店にとってキッチンカーの導入費用がネックになっていた。キッチンカーは標準化されているとはいいつつも、調理機材・スペースなどをカスタマイズしなければならず、改造費などで値段が張る。
「キッチンカーを無料で貸し出すことによって、飲食店などが試験的に移動販売などをできるようになります。無料貸し出しは経営面をサポートすることが主眼ですが、従来とは違った場所で営業して、新たな顧客層を開拓してもらうことも狙いに含んでいます」(日野市企画経営課)
行政がウーバーイーツに対抗するような施策を打ち出すのは、ウーバーイーツが売り上げを拡大させても地元の飲食店には還元されていないことが大きいからだ。行政がサポートしてテイクアウト・キッチンカー・移動販売などを始め、それが店の利益を少しでも増やす。そうした好循環をつくることは、飲食店や食品販売店だけにプラスになるわけではなく、行政にもプラスになる。
独走するウーバーイーツへの包囲網は確実に狭まっている。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)