ただ、吉野家と松屋はイートインの収益に頼らず、テイクアウトの収益を上げる施策として、テイクアウトの商品価格を下げるというキャンペーンを敢行。例えば吉野家は4月1日~4月22日まで牛丼・牛皿のテイクアウト15%オフ、松屋は4月16日~6月2日までおかず単品弁当のテイクアウト15~25%オフという、値下げ施策を行っていた。にもかかわらず松屋は前述したとおり、5月の売上高の前年同月比23.2%ダウンという残念な業績になっている。
「吉野家は比較的ダメージが少なく、松屋は大ダメージを受けていますね。同じテイクアウト値下げという施策を行った両チェーンに差がついたのは、吉野家の立地条件の良さによるものだと考えています。吉野家は駅前の好立地を選び、駅の利用者の目に留まりやすく、客が入りやすい場所に店舗を構えていることが多いんです。
また、吉野家は受け取り専用カウンターを設けている店舗が多いのもポイントとなったのではないでしょうか。三密を避けたいという方がテイクアウトを選ぶわけですが、テイクアウトしようとしても店内で並んで待つ時間が長いようでは、敬遠してしまう客もいるでしょう。そういった吉野家の戦略が、松屋との差を生んだのかもしれません」(重盛氏)
最後に新型コロナ感染の終息が見えない今、牛丼チェーンが今後どういった施策を打っていくべきなのか。
「やはりテイクアウト需要に注力すべきですから、今後はテイクアウトでも、より“美味しく食べてもらう”ということにフォーカスを当てる必要があると思いますね。例えばテイクアウト容器に、おうちで何分何秒加熱するといった、美味しく食べるためのコツを記載していくとか、消費期限を記しておくとか、テイクアウトした消費者に情報を正しく伝えて実行してもらうための施策が、今後の成功の鍵になってくるでしょう。
もちろんデリバリーサービスにも注力していくべきだと思います。まずは到着時に熱々の状態で食べていただけるような仕組みを考えることが大事でしょうね。
また、いろいろと制約があるのかもしれませんが、牛丼チェーンのキッチンカーというのも新しい試みとしていいのではないでしょうか。客に来ていただくのではなく、客が集まる場所にこちらから出向くというスタイルを確立していくということですね。キッチンカーなら新規店舗をつくるよりも、イニシャルコストもランニングコストも抑えられるでしょう」(重盛氏)
誰しも想定外だった新型コロナ流行による業績悪化という未曽有の危機を、牛丼御三家は乗り越えていけるのだろうか。牛丼ファンのためにも、今後の巻き返しを期待したい。
(文・取材=及川全体/A4studio)